
2026.04 らいふNo.109
呼吸器内科 小熊 昴
呼吸器感染症は高齢者の主要な死亡原因ですが、ワクチンにより重症化・入院・死亡を減少させることが多くの研究で示されています。
今回は、呼吸器内科関連で特に高齢者が接種を考慮すべき、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、COVID-19ワクチン(新型コロナワクチン)、RSウイルスワクチンの4つを紹介します。
肺炎球菌は、市中で発症する肺炎の原因として最も多く分離される菌です。高齢者および基礎疾患がある方では、重篤な肺炎球菌感染症である侵襲性肺炎球菌感染症のリスクが上昇します。侵襲性肺炎球菌感染症では、死亡率が16%程度という報告があります。
ワクチンによってデータは異なりますが、肺炎による入院率の減少、重症肺炎球菌感染症の予防効果が報告されております。
定期接種は①65歳の方、②60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方となっております。
65歳以上で基礎疾患のある方、免疫不全状態の方などは重症化リスクがあり、任意接種をご検討ください。基礎疾患には糖尿病、慢性肺疾患、アルコール依存症、慢性心疾患、慢性肝疾患などが含まれます。米国ACIP(予防接種実施諮問委員会)では、50歳以上の全ての成人と19歳以上の重症化リスクのある方への接種が推奨されております。
高齢者や基礎疾患のある方は、細菌感染症の合併などによりインフルエンザが重症化することがあります。インフルエンザは毎年冬季に流行し、日本の全人口の5~10%が感染し、3千~1万人が死亡しているという報告があります。
インフルエンザワクチンの効果は、年齢や基礎疾患、流行するインフルエンザの種類に影響されますが、インフルエンザの発病を54%減らすという報告があります。発病後の重症化や死亡を予防することに関しても一定の効果があるとされています。
定期接種の対象は、肺炎球菌ワクチンと同様です。
定期接種は毎年秋冬に1回となっております。
米国ACIPでは、禁忌の無い6カ月以上の全ての人にインフルエンザワクチンの接種を推奨しています。鶏卵アレルギーがあってもインフルエンザワクチン接種が可能と考えられております。
2024年の新型コロナによる死亡数は約3.6万人であり、インフルエンザによる死亡数の約2,900人を上回る数となっております。
定期接種の対象は、肺炎球菌ワクチンと同様です。
定期接種は毎年秋冬に1回となっております。
任意接種としてワクチン接種を受けることもできます。日本感染症学会では、65歳未満の基礎疾患のない健常な方にも、流行株に対応した新たなCOVID-19ワクチンの年1回の接種を推奨しています。
RSウイルス感染症は、高齢者、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患などの基礎疾患を有する成人は、インフルエンザと同程度の重症化リスクを持つと考えられています。しかし、成人のRSウイルス感染症には、インフルエンザやCOVID-19のような抗ウイルス薬は存在せず、ワクチンの重要性が高いと考えられます。
ワクチンは複数種類ありますが、50~80%程度の有効率があるとされております。RSウイルス関連呼吸器疾患による入院に対する有効率は83.3%という報告があります。
定期接種の対象は、現時点では妊娠28週0日から36週6日までの妊婦の方となっています。
日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の合同声明で、高齢者に対するワクチン接種が推奨されています。米国などでもRSウイルスワクチンの接種が推奨されております。
ワクチンを接種することで重症化予防などのメリットがあります。高齢者で感染症が重症化した場合、体力の低下につながり、退院が困難になるなどの可能性もあります。ワクチン接種による副反応も見られますが、頻度は低く、必要なワクチンに関しては接種するメリットの方が高いです。是非ワクチン接種に関して前向きな検討をしていただければと思います。今回紹介したもの以外にもワクチンがありますので、興味のある方は厚生労働省のホームページなどを確認していただければ幸いです。
厚生労働省ホームページ
日本感染症学会ホームページ
日本呼吸器学会ホームページ
図1 国内の市中肺炎症例の検出微生物における上位10病原微生物

(肺炎予防.jpから引用)