一口に子宮がんといっても大きく2つのがんに分けて考える必要があります。
まず始めに子宮頸がん。これは子宮の入り口にできるがんで、一般的に子宮がんといえば子宮頸がんを指します。これに対して子宮の奥にできるのが子宮体がんです。生活習慣の欧米化に伴って子宮体がんは増加傾向にあり、現在では子宮がんのうちほぼ半数が子宮体がんといわれます。
2006.7 らいふNo30
産婦人科 野村 英司
子宮頸がん患者数は近年増加~横ばい傾向にあるといわれています。子宮頸がんはヒトパピローマウィルスというウィルスの感染によって起こるといわれており、いわば性病の範疇に入ります。感染からがんに至るまでに約20年かかるといわれており、従って子宮がん検診を定期的に受けていればほぼ100パーセント早期発見が可能です。もちろんすべてが20年かかるわけではないのですが、性交行動が活発化する20歳代でこのウィルスに感染するとだいたい40歳代で発症することになります。実際の統計的な子宮頸がんの好発年齢は30~40歳代です。次のような事に心当たりのある人は一度婦人科受診されることをすすめます。
セルフチェックしてみてください。
子宮頸がんがウィルス感染が原因となって発病するのに対して、子宮体がんの原因として最も関わりが深いといわれているのがエストロゲンと言われるホルモンです。エストロゲンは俗に言う女性ホルモンの事で、女性を女性たらしめている最も重要なホルモンですが、人の体に強く作用すると子宮体がんや乳がんの発生に促進的に働くといわれています。
若い頃より生理不順の50代の女性に子宮体がんが多いのはこのためです。
エストロゲンは主として卵巣から分泌されるホルモンですが、体脂肪組織からも分泌され(厳密にはエストロゲン作用のある類縁ホルモン)ます。子宮体がんが太った女性に多いのはこのためです。子宮体がんは閉経後の女性に多いのは確かですが、その20パーセントは閉経前に発病しています。次のような事に心当たりのある人は一度婦人科受診されることをすすめます。
この中で最も重要なのは6.の不正出血です。
上述したように子宮頸がんでも子宮体がんでも不正出血が一つのキーワードになりますが、それぞれのがんで全く意味合いが異なってきます。子宮頸がんの場合ある程度進行しなければ不正出血は起こりません。不正出血は子宮頸がんの早期発見の指標にはならないばかりではなく、ある程度進行している証拠でもあります。したがって子宮頸がんを早期に発見するには定期的ながん検診しかありません。現在は20歳以上であれば市の検診が受けることができますので機会を逃さず、受診することをすすめます。
また子宮体がんの場合、子宮頸がんとは対照的に 極めて早い時期から不正出血が症状として現れます。結果的に子宮体がん患者の多くは臨床病期のⅠ期で発見され、全体の5年生存率も80パーセント以上と予後も良好です。しかし早い時期から症状が出るため、体がん検診をしても必ずしも100パーセント発見できるわけではありません。閉経間近あるいは閉経後で不正出血のある女性は、不正出血のあるかぎり何度でも婦人科を受診することをすすめます。
最後に不正出血という言葉ですが、これにはいろんな状況が含まれます。単なるホルモンのバランスが崩れて生じる生理不順もある意味不正出血と認識されることがあります。子宮がんにおける不正出血とはどういう感じなのか、最後に書き加えておきたいと思います。子宮がんにおける典型的な不正出血とは量は多くはなく、また常にあるわけではないが、ときには茶色の帯下、ときには黒い帯下、ときには赤い出血が断続的に一ヶ月、二ヶ月続く場合。
もし上述の不正出血に心当たりがあれば明日、婦人科に行きましょう。