文字サイズ
背景色
  • お知らせ
  • フロアマップ
  • アクセス
  • お問い合わせ

王子総合病院

わかりやすい医学教室

ペースメーカー治療について

2019.04 らいふNo81 
循環器内科 堀田 寛之

 

心臓ペースメーカーは脈が遅い患者さんを治療する目的で作られた精密医療機器です。日本でもたくさんの患者さんがペースメーカーの植え込みを受けております。今回は、ペースメーカーに関する知識を深めていただけるようまとめてみました。

心臓の基本知識

心臓は筋肉の収縮と拡張を繰り返すことで、体全体に血液を送り出すポンプの働きをしています。1日に10万回以上休むことなく動いています。リズムよく動くために、洞結節という部位から電気信号が規則正しく発生し、心臓の中に張りめぐらされた電気の通り道を通って筋肉を収縮させています。

不整脈について

不整脈には脈が速くなる不整脈と遅くなる不整脈があります。ペースメーカーの適応となるのは脈が遅くなる不整脈です。洞結節から電気信号が発生しなくなったり、電気信号がうまく伝わらなかったりすると脈が遅くなります。洞不全症候群や房室ブロックという病気が該当します。

ペースメーカーの構造

ペースメーカー本体とリード(導線)で構成されています。本体は電池と電気回路が内蔵され、重さは20g程度です。リードは先端を心臓の筋肉に固定させます。心臓の電気信号を24時間監視し、脈が遅くなった場合に本体からリードを介して心臓に電気信号を送り、心臓を収縮させる仕組みとなっています。

手術方法

もっとも一般的なのは、鎖骨の下にある静脈にリードを挿入して心臓の中に入れる方法です。本体は鎖骨の下あたりの皮膚の下に植え込まれます。局所麻酔で手術時間は1-2時間ほどです。術後、1週間ほどで退院となります。患者様によっては胸を開ける外科手術時に、リードを心臓の表面に直接つけて、本体を腹部に植え込む場合もあります。

日常生活について

最初は不安で消極的になりがちですが、徐脈による症状が軽快するため、基本的にはもとの日常生活を送ることができます。ただし、植え込んだ部位に近い筋肉を激しく動かし続ける運動は避けたほうが良いです。入浴はできますが、電気風呂は避けてください。外出の際は忘れずにペースメーカー手帳を携帯してください。

 

ペースメーカーと電磁干渉

以前のペースメーカーはMRI検査ができませんでしたが、近年のペースメーカーはMRI検査が条件付きで施行可能となっています。磁気治療器や電気治療器などは使用しないでください。携帯電話などは植え込み部位から15cm以上離して使用してください。店舗の出入り口などに設置している盗難防止装置は立ち止まらずに通過してください。

定期点検

退院後、ペースメーカーの作動に問題がないか、電池の残量などを調べるため、半年に1回、定期検査を行います。

ペースメーカーの交換

電池で作動している為、電池が少なくなると本体を交換する必要があります。入院による手術となり、最初に植え込んだ時と比べると比較的短時間で済みますが、リードに異常があれば新しいリードを入れるため多少時間がかかる場合もあります。

 

リードレスペースメーカー

2017年9月から日本で使用可能となった世界最小のペースメーカーです。従来のペースメーカーのリードをなくし、本体を小さなカプセル型に小型化し、そこに電気回路、電池、電極などが全て組み込まれています。先端についているハネのような部分を心臓の内部に固定します。小型化されたことで、カテーテルを用いて植え込むため、皮膚をメスで切ることが不要となりました。電池寿命も最長で12年と今までのペースメーカーとそれほど変わりありません。寿命が来た場合、残念ながら取り出すことはできないため、2つ目を入れます。また全ての方に適応となるわけではなく、不整脈の種類や病状に応じて判断いたします。

最後に

日頃から自分の脈をとることを心掛け、異常を感じた場合は循環器内科にご相談ください


わかりやすい医学教室