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王子総合病院

わかりやすい医学教室

肝臓病について

肝臓の仕組みと働き

肝臓は人の臓器の中で最大のもので、日本人では1000~1500グラムあり、体重の約50分の1に相当します。肝腎なこととか、肝心かなめなどと表現することがしばしばありますが、これは肝臓という臓器が身体の中で非常に重要な働きをしていることをうまく言い表しています。新陳代謝の中心的役割を演じたり、ホルモン、アンモニア、薬剤、毒物などを解毒する働きもあります。また造血作用もあり、凝固因子を合成し止血にも関係しています。

肝臓の検査でどこまでわかるか

「肝臓は沈黙の臓器である」という言葉は、どこかで聞いたことがあると思いますが、肝臓が沈黙を破り、黄疸とか腹水のような形でしゃべりだしたときは、すでに重症で入院の必要があります。まだごく軽症の時、沈黙の臓器のささやきを、患者さんの血液を使って感知するのが、「肝機能検査」の重要な役割です。肝障害の診断、黄疸の鑑別、重症度判定、経過観察、治癒判定の各々の目的により検査項目の組み合わせがあり、これによっても解らない点は画像診断などを要するのです。

肝臓病にはどのようなものがあるか

肝臓の病気には非常に多くの種類があります。比較的よくみる病気として次に挙げる病態を日常生活で注意する点を中心に書いて行きます。

1.脂肪肝
 肝臓病の中でも現代病と位置づけられる病気です。近年の豊かな食生活やアルコール消費量の増大が原因とも言われ、成人病健診の男性では17%に認められます。最も大きな要因は、肥満又は糖尿病による過剰栄養があげられ約70%を占めます。次に多いのがアルコール性です。これらはバランスの良い食事と禁酒によって約一ヶ月で正常肝機能に戻ります。放置すれば肝臓に線維化が生じ、やがて肝硬変へと進みます。
2.急性肝炎
 ウイルス感染や薬剤アレルギー、自己免疫反応などによって起こる一過性の肝障害です。肝細胞が急激に破壊されていきますが、一般的に経過は良好です。しかし稀に慢性化し、慢性肝炎から肝硬変、肝癌へ進展することもあります。A型肝炎は、生鮮食品や飲料水を介して感染します。B型、C型肝炎は、血液を介して感染します。A型肝炎の予防は、感染機会の高い東南アジアなどに旅行するときなどワクチン接種が望ましいです。感染者が家族にいるときは、トイレや入浴を通じて感染しないよう隔離が必要になり、入院します。B型肝炎も予防にはワクチン接種が有効です。またパートナーがウイルスを持っている場合は、ワクチン接種、セックスでのコンドームの使用を考慮し、剃刀、歯ブラシの共有は避けます。
3.慢性肝炎
 かつては、「おいしいものを食べて十分に安静をとる」ことが第一と考えられてきましたが、現代の医学ではこうした考えは全く否定されています。一番大切なのは根本的な治療で、B型、C型肝炎では、インターフェロン投与が行われています。C型肝炎では、約三割の人でウイルスが消滅し、完治するようになりました。そこまでの効果が得られないケースでも肝機能が改善されれば肝癌の発生率は、明らかに低下する事が判明しています。こうした治療の上に立って補助療法としてバランスのとれた食事をすることです。必要以上の高栄養、高蛋白質、運動不足は、肥満を招くなど悪い方向に働き筋肉の衰えを助長し、むしろ肝臓病治療の妨げになります。
4.肝硬変症
 慢性肝炎での肝臓のびまん性の線維化が進むと、肝臓の血液の流れが悪くなり、働きが低下して、肝臓が硬くなった状態をいいます。そうなると二度と元には戻りません。日本での原因はB型、C型肝炎ウイルスによるものが約60%を占めアルコール性が20%、その他が20%です。肝硬変でも代償期とよばれる無症状な状態では、特別な食事制限は必要なく、偏食を避け、適正な摂取エネルギーですべての栄養素を過不足なく摂ることが大切です。一方、非代償期とよばれる黄疸、浮腫、腹水、意識障害、消化管出血などの症状が出現する時期になると、検査の成績をみながら、食事内容をコントロールすることになります。むくみや腹水などの症状が現れやすくなるので塩分と水分の制限が必要になり、また肝臓の機能を維持するために、栄養治療剤が開発されていて、補助療法として試みられるようになっています。

いずれの病気についてもいかにつきあっていくかが大切で、我々医師や看護婦は、適正な助言や治療をし患者さんの手助けをしているわけです。

消化器科では

消化器科では、いかに患者さんに苦痛を与えずに最先端の検査や治療を受けていただくかを念頭におきながら毎日の診療に従事しています。肝炎を含む肝臓疾患の治療はもとより、胃、大腸内視鏡検査をはじめとして、内視鏡的に治療可能なポリープ、腫瘍切除治療や、総胆管結石の内視鏡的除去術などをしています。他に肝臓腫瘍の血管造影を基本とした塞栓療法や、アルコール注入法による治療など、消化器全般多岐にわたって、十分な安全性を考慮しつつ治療にあたっています。


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