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王子総合病院

わかりやすい医学教室

放射線治療について

放射線で癌が治る仕組み –分割照射–

がんは、体内の正常な組織(臓器)の一部にできます。この、がんの部分を狙って大量の放射線をいっきに照射すると、がん細胞は死滅し、がんが消えます。しかし、まわりの正常な組織にも放射線がかかるので、障害がでます。最悪の場合、組織が壊れて元に戻らなくなってしまいます。ところが、分割照射という方法を用いると、正常な組織にはあまり障害を残さず、がんを治せるということがわかって、がんの放射線治療が、理論的に確立しました。また、余計な部分への照射を避け、がんの部分のみに絞って正確に照射する技術が進歩したことにより、治療成績がよくなってきました。これらについて、簡単に述べてみたいと思います。

いま、大きさが1センチくらいの小さながんが見つかったとします。ここには、がん細胞が数億個集まっていると考えられます。人間の体は、およそ60兆個の細胞で出来ているといわれていますが、体重60キロの人なら、1キロあたり1兆個、1グラムあたり10億個の細胞があることになるからです。

このがんに、がん細胞の半数が死ぬくらいの少量の放射線を1回かけると、まわりの正常な組織の細胞も、同量の放射線がかかって弱り、半数が壊れていきます。正常な組織では、残った元気な細胞が数を増やし、1日で元の状態に近づきますが、この時点では、がん細胞はまだ増える準備をしておらず、半分に減ったままです。ここでもう一度放射線をかけると、がん細胞の数はさらに半分になります。正常な組織は、元の状態まであと一歩というところで放射線がかかるので、次の日は、元の状態まであと2歩という状態にあることになります。これを30回くり返すと、数億個のがん細胞が1個になり、そして消えてしまう計算になります。このころ、正常な組織はかなり傷んでいますが(元の状態まであと30歩?)、これで放射線をやめれば、後戻りすることのない回復が続くので、およそ1ヶ月くらいで元の状態に戻ります。体を切らずにがんが治ったことになります。この照射方法を、分割照射法といいます。

分割照射の理論が放射線治療の基本です。もちろん、実際はこんなに単純ではありません。がんにはさまざまな種類、さまざまな状態があります。大量の放射線をいっきにかけないと半分にならないがん、かけて一日たつと数が元に戻っているがんなどには、そのままでは応用できません。また、大き過ぎるがんもだめです。いずれも、まわりの正常な組織の障害が大きくなってしまうからです。こうしたがんでは、手術や抗がん剤が主役となります。

王子総合病院では、高エネルギー直線加速器という装置で、レントゲン撮影の何百倍も強いエックス線をつくり出し、放射線治療に使っています。がんとまわりの正常な組織の位置関係をCTに撮り、がんを全部含んで、しかも、弱い組織をはずれるような、放射線の幅と方向をいくつか選びます。これを組み合わせて照射した場合の、がんやまわりの組織に実際にかかる放射線の量を専用のコンピュータで計算し、適切であると確認できたら、回数を決めて、治療の準備が整います。

ラジオサージェリー

大量の放射線をいっきに照射するとがん細胞も、正常組織もともに死んでしまって元に戻らないため、少しずつ繰り返し照射する分割照射が基本であると述べました。しかし、小さな病変に対して、放射線の幅を小さく絞り、前後左右だけでなく上下方向も加えて立体的にかけることができれば、たとえば異なる10以上の方向から少しずつ病変に集中させると、正常な部分には少し、病変には大量の放射線がかかることになるので、1回の治療で病変はやがて消え去り、正常部分には障害が残らないことになります。人体でこれができる場所は頭です。特殊な器具を頭部に装着して、これを治療ベッドに固定し、誤差1ミリ以内で照射します。放射線の幅を小さくしているため、照射中にわずかなズレもないようにする必要があるからです。これがラジオサージェリーと呼ばれる方法で、最近、多くの病院で行われるようになり、効果をあげています。精度の高い治療装置と専任のスタッフが必要なので、まだ道内では大学病院をいれても数カ所の施設でしか行われていませんが、王子総合病院はその中の1つです。ところで、脳出血の原因である脳動静脈奇形(AVM)は、がんではありませんが、小さい場合、この方法で治ることがあります。開頭(手術)しなくて済むので、AVMが見つかった時、治療の候補にあげて検討する価値があると思います。


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