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王子総合病院

わかりやすい医学教室

腰椎症について

腰痛について

近年、腰痛で悩む人が多くみられます。疫学調査によると全人口の約8割の人が生涯のうち何等かの腰痛を経験し、重労働者の45%、タクシー運転者の65%が腰痛で治療を受けたことがあると報告されています。当科においても、腰痛の患者さんは非常に多くみられますが、活動の制約を余儀なくされ、惹いては休業、さらに抑うつや不安なども引き起こし、大きな問題となります。

腰痛の原因と治療

そこで、腰痛の主な原因となる疾患と対策について述べます。

  1. ぎっくり腰
    いわゆる「ぎっくり腰」は急性腰痛症で、主に椎間関節(背骨の後部にある小さな関節:図)のズレが原因と考えられています。一般に起床直後に多く、急激な動作や重量物挙上で起こります。医学的に実証されていることですが、夜間の臥床で椎間板が伸びきり(成人脊椎-全24個の椎間板で約1cm伸びます)、椎間関節は油ぎれの状態で、起床直後は力学的にスムースな動きができないからです。予防は急激な動作を避けることです。大部分は数日から1週間の安静で軽減します。
  2. 姿勢性腰痛症
    慢性の不良姿勢によるもので、比較的多く見られます。筋肉の異常緊張による筋の疲労で、日常生活で数多くあります。つまり、柔らかすぎるベットやソファ、体に合わない椅子と机、浅く腰掛けた姿勢(車の運転)、家庭の主婦では流し台の高さ、ハイヒール、肥満、筋力低下(運動不足)、長時間の中腰姿勢、畳の上での徹夜麻雀などです。生活の改善が重要です。
  3. 腰椎椎間板症
    (1)と(2)は、X線上異常のない場合が多いのですが、椎間板に異常がある場合を椎間板症といいます。脊椎(図)に加令変化をおこした状態を広い意味で「変形性脊椎症」といいますが、特に椎間板の不安定性に起因する「不安定腰椎」(X線上椎間板が明らかにぐらぐらと動きが大きく痛みの原因になっている場合)は、椎間板症の中でも重症です。高齢者、重労働者に多くみられます。何れにしても、これらは下肢痛が無く大部分は数週間の安静で軽減しますが、一度治っても繰り返す場合があります。
    以上の(1)(2)(3)に対しての対策は、日頃から体幹筋力強化訓練やストレッチング、正しい姿勢に注意することが重要です。腰痛患者さんの体幹筋力を測定すると、健常人に比べ大半は低下しています。力仕事にはコルセットも必要となるでしょう。不安定腰椎で腰痛に困る場合は稀に手術となります。
  4. 腰椎椎間板ヘルニア
    椎間板の真ん中にある髄核という柔らかい組織(例えば、あんこ餅やあんパンのあん)が外に飛び出して坐骨神経を圧迫した状態です(図)。20~40歳位の人に多く、激しい下肢痛を訴え時には歩けなくなります。治療は、安静、投薬、骨盤牽引で8割の人は軽減しますが、神経麻痺を起こし重度の場合は入院、手術となることがあります。
  5. 腰部脊柱管狭窄症
    主に中年期以降で腰痛、下肢痛を来す疾患の代表的なものです。椎間関節や椎間板(図)の加令変化によって、脊柱管という神経の入れ物が狭くなった結果、神経が圧迫され腰痛や下肢痛しびれ、会陰部症状(しびれや排尿や排便困難)、さらには間欠跛行という特有の症状がでます。これは、起立や歩行で下肢痛やしびれ、脱力が発生し、安静により軽快する症状です。つまり、電柱、1、2本分歩くと下肢痛が強くなり、座ったりしゃがむと良くなる。結局休み休み歩くことになります。治療は、排尿や排便困難が明らかであれば手術の絶対適応ですが、それ以外では、まず安静で軽減するので保存的に治療します。薬物療法、理学療法、装具療法、神経ブロックなどです。それでも症状が強く仕事や日常生活に支障を来す場合は手術適応となります。「すべり症」のような不安定性のある場合は、手術に際し固定術も併用され治療期間が少し長くなります。

  6. 骨粗鬆症
    骨粗鬆症では、背骨(椎体)自体が脆くなるため、目に見えない骨折やX線に写る骨折(圧迫骨折)により腰痛がでます。一般にホルモンの関与が原因とされており50歳以上の閉経後の女性に多く、また男性高齢者にも見られます。婦人科や内科の病気から続発する場合もあります。いまや日本は高齢化社会であり、骨粗鬆症患者は全国に700~1000万人と推定されています。年々増加しており、医療費や後遺症などで社会問題となっています。つまり、つまづいたり尻もちをついて背骨の圧迫骨折や大腿骨頚部骨折をおこし、高齢であるが故に歩行障害、痴呆、感染症など合併症を併発し、家庭復帰ができなかったり寝たきりとなるからです。治療は、予防・早期治療が第一です。薬物療法が主体となります。現在全国で治療中の患者さんは200万人ですが未治療の患者さんはまだ600万人残っているそうです。薬物療法(カルシウム剤、カルシウム吸収促進剤・骨吸収抑制剤、ビタミンD3・K2製剤、ホルモン剤など)の他、食事、適度な運動や日光浴も大切です。
  7. 腫瘍
    悪性腫瘍の脊椎骨盤転移、脊髄腫瘍
  8. 感染症
    (化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎)があげられます。
  9. その他
    (内臓疾患に伴う関連痛など)いろいろあります。いずれも病院での早期適切な治療が必要です。

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