文字サイズ
背景色
  • お知らせ
  • フロアマップ
  • アクセス
  • お問い合わせ

王子総合病院

わかりやすい医学教室

前立腺疾患に伴う排尿障害

あなたは「オシッコの出かたに不満を感じていませんか?」と聞かれたときどう答えますか。「出かたは悪いが、年のせいだからしかたない。」と答えられる方が少なからずいると思います。しかし、夜中のトイレやオシッコの出の悪さは、けっして年のせいだけではありません。欧米では60歳以上の男性で、極めて高率に排尿障害を伴った前立腺疾患(前立腺肥大症、前立腺癌など)の発症がみられるため、60歳以上を「前立腺年令」と呼んでいます。日本においても高齢化社会が進む中、確実に前立腺疾患が増加しています。たとえば前立腺肥大症について道内の集団検診で60歳代から80歳代の男性で11~21%に治療を要する前立腺肥大症を認めております。一方、前立腺癌も確実に増加しております。今回はこれら前立腺肥大症と前立腺癌についてできるだけわかりやすく(質問形式で)説明したいと思います。

 

2003.01 ライフNo16 
泌尿器科 田口 圭介

前立腺肥大症について

前立腺とはどんな臓器でしょうか?
 膀胱の下にあるクルミ大の男性特有の臓器で、オシッコの通り道である尿道を取り巻くように存在します。前立腺の役割は、精液の一部を分泌することです。
前立腺肥大症とはどんな病気でしょうか?
 前立腺は、50才を過ぎる頃から大きくなる人が5人に1人くらいの割合でいます。前立腺肥大症とは、前立腺が大きくなることにより尿道が締め付けられ、尿が出にくくなる良性の病気なのです。

前立腺肥大症の症状は?
1)夜中に2回以上オシッコに起きる。
2)オシッコがなかなか出ない。
3)オシッコの出が悪く勢いがない。
4)オシッコをした後残った感じがする。
5)オシッコが途中でとぎれる。
6)オシッコがもれる。
7)オシッコをがまんできない。
などです。このような症状のある時は要注意です。
前立腺肥大症の自己評価法はあるのでしょうか?
前立腺肥大症には次ページ表のような国際的な自己評価法があります。ご自分で採点してみて、合計点が8点以上であればぜひ泌尿器科専門医にかかりたいものです。
前立腺肥大症の治療法は?
前立腺肥大症の治療法は、大きくわけて薬による治療法と手術による治療法があります。薬の治療法としては、前立腺の平滑筋の緊張をとり排尿時の抵抗を少なくする薬(α1遮断薬)や肥大した前立腺を縮小させる薬(抗アンドロゲン剤)等がありますが、一般的には効果の発現の早い前者を使うことが多いです。手術療法は、薬による効果がない場合に行われます。一般的な手術法として、内視鏡的に前立腺の肥大した部分を削り取る手術(経尿道的前立腺切除術)があります。

前立腺癌について

前立腺癌とはどんな病気でしょうか?
前立腺にできる癌で、比較的進行はおそいと考えられています。しかしこの癌が前立腺の外側にまで進行したり、他臓器に転移してしまうと治癒不能となります。やはり早期発見と早期治療が必要です。我が国では、現時点では死亡率は比較的低率ですが、今後、高齢化社会や食生活の欧米化により、前立腺癌の占める比率が上昇する事が予測されています。
前立腺癌の症状は?
前立腺肥大症と同じく、排尿障害が多いです。無症状のこともあります。また前立腺癌は骨に転移しやすく、このような場合には腰痛を起こすこともあります。
前立腺癌の検査法は?
血液検査と直腸診でわかることが多いです(いずれも排尿障害で受診される患者さんに行います)。特に血液検査はPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーの進歩により、早期のうちから検出することが可能になりました。また直腸診では、前立腺肥大症とは異なり石のように硬く触れることがあります。これらの検査で異常のあった場合、前立腺生検という検査手術を行い癌の有無を最終的に確認します。
前立腺癌の治療法は?
前立腺癌に対する治療法は基本的に、1)手術療法(前立腺全摘除術)、2)放射線療法、3)内分泌(ホルモン)療法があります。それぞれの治療は基本的に前立腺癌の状態や年令等で決定されます。手術療法や放射線療法は遠隔転移のない患者さんに行われる局所療法で根治性を目指して施行されます。内分泌療法は前立腺癌のうち転移のある症例や高齢で手術を受けられないような患者さんに行います。この治療は前立腺癌の成長を促す男性ホルモンの産生を遮断する方法で最近では薬物療法により行うことが多くなりました。
前立腺肥大症との関係は?
前立腺肥大症と前立腺癌は、全く別の病気です。しかし、前立腺肥大症になりやすい年令は、癌が発生しやすい年令でもあり、前立腺肥大症と思って受診された患者さんから前立腺癌が見つかることも決して少なくありません。オシッコに異常を感じる50歳以降の男性の方はぜひ泌尿器科医に御相談していただきたいと思います。

おわりに

当院泌尿器科は、日本泌尿器科学会指導医、専門医を含む3名の医師スタッフで治療にあたっております。具体的には、1)男性・女性の排尿障害(前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿失禁等)、2)尿路・生殖器腫瘍(前立腺癌、膀胱癌、腎癌、睾丸腫瘍、副腎腫瘍等)、3)尿路結石(腎・尿管・膀胱結石)、4)尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎・尿道炎等)、5)男性不妊症・性機能障害(ED)、6)尿路・生殖器先天異常などを担当しております。特に腎結石・尿管結石の治療については、平成12年度に、体に負担の少ない最新型の体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)を導入し、札幌など遠方まで行かずにこの治療(保険適応)を受けられるようになりました。また、前立腺癌や膀胱癌等の尿路悪性腫瘍症例に対する高度な根治的手術も多数行っております。
「尿の勢いがない」、「くしゃみをすると尿が漏れる」、「尿に血が混ざる」、「結石による痛みがある」などの症状でお悩みの方は、男性・女性を問わず気軽に私達に御相談下さい。


わかりやすい医学教室