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王子総合病院

わかりやすい医学教室

大腸がんについて

日本人の死因のトップはがんです。苫小牧市においても同様にがんが死因のトップで32.7%を占めています(保険統計書、平成14年3月)。そのなかで大腸がんは食生活の欧米化などにともない肺がん、乳がんとともに増加傾向にあります。

 

2004.4 ライフNo22 
外科 岩井 和浩

大腸とは

大腸は、小腸から続く結腸と肛門へ続く直腸をあわせたもので約2メートルの長さがあり、小腸で消化吸収された腸内容の水分の吸収、便の貯留を行っています。結腸はさらに盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。S状結腸と直腸が大腸がんのできやすい部位です(図)。

大腸がんとは

大腸がんは遺伝的素因によるものは少なく、多くは食生活などの環境的因子の比重が高いと考えられます。大腸のポリープはがんに移行していくことがありポリープが見つかった時には専門医(消化器内科)に診てもらう必要があります。

大腸がんの症状

がんに特徴的な症状はありません。とくに早期のがんではほとんど自覚症状がない場合が多く進行するにしたがいさまざまな症状があらわれます。肛門に近い直腸、S状結腸では血便、便が細くなるなどの排便障害が起こることが多いのに対し肛門から離れた盲腸や上行結腸では貧血症状や腫瘤の自覚で気づかれることもあります。

大腸がんの検査

大腸がんの検査として代表的なのが、便潜血反応、注腸造影検査、大腸内視鏡などです。便潜血反応は一定量以上の消化管内の出血があれば陽性になりますが不確実で場所、疾患の特定は困難です。1回の検査で陽性になるのは、がんから見ると6割で複数回の検査が重要です。注腸造影検査は肛門からバリウムと空気を注入しX線写真をとる検査で場所や形状のチェックに用いられます。大腸内視鏡検査は最も確実な検査で盲腸まで全大腸を内腔から観察します。診断とともにポリープの切除(内視鏡的ポリペクトミー)も可能です。他に血液検査で腫瘍マーカーがありCEA、CA19-9が一般的ですが、進行癌であっても約半数が陽性を示すのみで大腸がんを早期に発見する腫瘍マーカーはまだありません。

大腸がんの治療

治療法には内視鏡的治療、外科療法、放射線療法、化学療法があります。内視鏡的治療とは内視鏡で観察確認したポリープを切除するもので、数日の短期入院で治療可能です。ただ摘出したポリープの顕微鏡的検査で病変が深くまで広がっていれば外科療法の追加が必要となります。外科療法は大腸がんの治療の基本となるものです。結腸がんの手術はがんを含め周囲のリンパ節とともに切除するもので術後の機能障害はほとんど起こりません。それに対し直腸は骨盤のなかにあり、周囲に前立腺、膀胱、子宮、卵巣などの泌尿生殖器があり手術により排便、排尿、性機能などが障害される場合があります。またがんが肛門に近い直腸にできたものでは人工肛門を造設する直腸切断術が必要となる場合があります。近年普及してきた内視鏡手術は患者さんに与える侵襲が少なく術後の回復が早いため大腸がんにも応用され一部の早期がんなどに行われており当院でもこれまでに約20例の患者さんに施行しています。放射線治療は直腸がんの術前治療、術後再発の治療などに用いられます。抗癌剤を用いた化学療法は手術時に肝臓や肺などに転移していて切除不能のものや再発が明らかなものなどの治療に用いられます。肝臓だけに転移がある場合には肝動脈から抗癌剤を注入する肝動注化学療法が行われる場合もあります。再発転移大腸がんでもその部位、個数により手術を行い有効な場合があります。

大腸がんの予後

大腸がんと診断がつくと、がんのひろがり、肝臓、肺などへの転移の有無などの検査が行われ進行度が決定され治療方針が決まります。進行度の表現にはステージ分類(表)がもちいられその予後が推測されます。

 

大腸がんのステージ分類
0期 がんが粘膜にとどまるもの
Ⅰ期 がんが筋層までにとどまるもの
Ⅱ期 がんが筋層を超えているが隣接臓器におよんでいないもの
Ⅲ期 がんが隣接臓器におよんでいるが、リンパ節転移のあるもの
Ⅳ期 腹膜、肝、肺などへ転移のあるもの

 

 

終わりに

大腸がんは検診などで早期に発見できれば治癒率の高いがんです。定期的な検診を受けることで進行癌にいたる前での治療が可能となります。また進行癌で発見された場合でも手術を含む集学的治療によって他の消化器がんにくらべてかなりの治療効果が見込まれます。治療法などについて御質問、御相談がありましたらお気軽に外科外来を受診して下さい。

追記

当院外科は日本消化器外科学会認定施設で年間約80例の大腸がん手術を行っております。筆者が赴任した1995年以降、筆者が執刀した大腸がん手術は250例以上になりますがその遠隔成績はステージⅠ、Ⅱで5年生存率90%以上、ステージⅢは60%以上、ステージⅣは25%以上で道内外の専門施設と同様の成績と考えております。大腸がんを含む消化器がんおよび乳がんの治療に関して御相談のある方は外来受診の上、お気軽に御相談下さい。


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