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王子総合病院

わかりやすい医学教室

痛風とは?

高尿酸血症が長く続き血中に溶けきれなくなった尿酸が関節や腎臓などに結晶として蓄積し炎症を起こすのが痛風です。代表的な症状として、足の親指のつけ根がひどく腫れて激痛発作を伴うことが知られています。西洋では古くからよく知られた痛風ですが、日本で初めて痛風患者の報告があったのは約100年前のことです。生活習慣の欧米化とともに痛風にかかる方は急増し、現在では約50~60万人になります。1/4の症例に遺伝が見られ、主に40歳代以降の方が罹患します。圧倒的に男性に多く、大酒家や肉類を多く摂取する人に好発します。

 

2004.10 らいふNo23 
循環器科 松本 倫明

高尿酸血症とは?

尿酸はからだの正常な営みによってできる老廃物のひとつで、食物中のプリン体からも合成されます。 高尿酸血症は体内で作られる尿酸の量が多すぎたり(産生過剰)、体の外へ排泄される量が少なくなり(排泄低下)、体内に尿酸が蓄積することによって起こります。 血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。

痛風発作 痛風関節炎

痛風発作の代表が痛風関節炎で、突然足の親指のつけ根の関節が激痛に見舞われ、赤く腫れあがるのが典型発作です。それ以外(図)にはひじやひざ、かかと、足の親指以外の関節、くるぶしなどで発作が起こりますが約70%は足の親指のつけ根がかなり痛くなります。すこし大げさですが、ほんの少し動いたり、近くを車が通りすぎる音さえも足に響き激痛を覚えてしまう-薬のなかった昔の人にとってはまさに「風が当たっただけでも痛い」痛風発作でした。一方で、痛風性関節炎の激しい痛みは一時的で長くても1~2週間しか続きません。その後は痛みがなくなり治ったと勘違いしてしまう方が多いのも問題です。発作が治まったからといって元凶の高尿酸血症が改善されたわけではありません。

痛風の多様な病態

痛風というと激しい関節の痛みを思い浮かべますが、ほかにも痛風結節や尿路結石とよばれる症状があります。痛風結節とは痛風発作を治療せずに放置しておくと体内の尿酸が異常に多い状態が続き、手足の関節部付近や耳などに尿酸の塊が沈着してくることをいいます。また、尿の通り道に尿酸の結晶が固まって結石ができると尿路結石になります。腎臓に尿酸の結晶が蓄積されると腎不全(腎臓が障害され正常な尿がでなくなる)を引き起こすこともあります。

治療その1 生活習慣改善

痛風・高尿酸血症の治療は生活習慣の改善が基本です。食事内容によって尿酸値は変化しますが(表)厳密なプリン体制限は実際には困難で長続きしません。最近では「これは食べてはいけない」という食品の制限はあまり指導しなくなりました。痛風の患者さんの60%には肥満があり、肥満度が大きいほど尿酸値は高くなります。それよりも食べる総量を制限しバランスよく食べることが大切です。アルコール飲料を飲むと尿酸値は上がります。アルコールが体内で分解される時に尿酸が作られること、一部のアルコール飲料には尿酸の元になるプリン体が多く含まれていることなどがその主な原因です。どんな種類のお酒でも尿酸値や痛風にはよくないわけですが、尿酸の素になるプリン体を含む量は種類によって違います。プリン体はビールに最も多く含まれ、ウイスキー、焼酎などの蒸留酒にはそれほど含まれていません。一般に酒の肴にはプリン体を多く含むものが多いので気をつけましょう。いわゆる二日酔いの脱水状態は痛風発作の天敵です。十分な水分摂取と適度な運動は高尿酸血症の悪化や痛風発作を予防します。

治療その2 薬物療法

薬物療法は、対症療法である痛風発作の治療と原因療法である血液中の尿酸値のコントロールの2つに分けられます。痛風発作の治療としては、主に痛風発作時に消炎鎮痛薬(各種痛み止め)を使用します。血清尿酸値のコントロールには体内で尿酸産生を抑制する薬剤(当院ではザイロリック錠)と、尿中への尿酸排泄を促進する薬剤(当院ではユリノーム錠)があります。尿酸値をコントロールする薬は服用をやめると尿酸値がすぐにもとに戻ってしまうため、長期間、根気よく治療を継続することが大切です。

おわりに

痛風の患者さんには肥満ならびに高血圧、高脂血症や糖尿病といった生活習慣病の合併が多いことがわかっています。これらを複数合併すると動脈硬化による心臓病や脳卒中を飛躍的に起こりやすくなります。痛風や高尿酸血症と診断されたら、これらの合併症がないかどうかを評価して適切に管理することが重要です。また高血圧や糖尿病、高脂血症がある方は高尿酸血症を発症しやすい素因があるとも言えますので十分な注意が必要です。尿酸高値を健康診断等で指摘される方も多いかと思います。ぜひ放置せずに適切な指導のもとに管理をはじめてください。


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