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王子総合病院

わかりやすい医学教室

AEDを用いた心肺蘇生

最近新聞などでAEDについての記事が載るようになってきましたので、皆さんの中にもAEDという言葉を見たり聞いたことのある方がきっといると思います。当院でも所々にAEDという大きな文字が掲げられている(写真)のをご存じですか?今回はこのAEDについて簡単に紹介しましょう。

2005.7 ライフNo26 
麻酔科 浅野 真

 

 

心肺蘇生が必要となる心停止にはいくつか種類がありますが、その中で最も助かる可能性のあるのが心室細動と呼ばれるものです。これは心臓におきる電気的なトラブルの一種と言え、健康と思われた人がスポーツの最中などに突然発症し急死の原因となることがあります。この心室細動の唯一の治療法は電気ショック(除細動)を行うことです。そして速やかに除細動ができれば、全く問題なく社会復帰できる可能性があります。この除細動をだれでも安全に行えるように開発された器械がAED(自動体外除細動器、写真)なのです。

 

このAEDは昨年7月から一般の方でも使用できるようになり、リスクマネジメントの観点から様々な場所に設置されだしているところです。
心肺停止では特に脳が短時間のうちに障害を受けることを皆さんはよくご存じと思います。わずか4分間脳に酸素が行かないだけで脳障害をひきおこす可能性があります。心室細動の治療には除細動が有効なのですが、除細動が遅れると1分経過する毎に生存退院率は7~10%ずつ低下していきます(図)。

 

 

できるだけ早期に除細動をする必要のあることが理解いただけると思います。心室細動による心停止ではこの除細動までの時間は病院外では5分、病院内では3分が目標とされています。
これではどうやったらそれほど素速く除細動をすることができるのでしょうか。病院外では119番通報から除細動器を持った救急隊員が現場に到着するまで6分少々かかります。もしそれよりも早く除細動をするとすればそれは皆様がた自身でおこなわれる必要があります。そしてそのために開発されたのがAEDなのです。このような目的から少しずつ競技会場、愛知万博のような各種イベント会場、空港(写真)などに配備されだしています。

 

現在ではAEDによる除細動は非医療従事者つまり一般市民が行うべき一次救命処置に含まれるものになりました。

重要な人工呼吸と心臓マッサージ

心室細動に対してAEDで全て問題が解決するわけではありません。心室細動のために心拍が停止すると同時に脳と心臓はどんどん弱っていきます。これを防ぐのが人工呼吸と心臓マッサージです。適切な人工呼吸と心臓マッサージを続け、脳と心臓を守りながらAEDの到着を待つ必要があります。正しい人工呼吸と心臓マッサージができてはじめてAEDが役に立つことになるのです。

実際の場面でのAEDの使用方法

もし目の前の誰かが突然意識を失って倒れたら、心室細動の可能性があります。まず皆様がすることは意識のないことを確認することです。もし意識がなければ近くの誰かに119番通報などをしてAEDを持ってきてもらいます。次に呼吸の有無を確認し、呼吸がなければ人工呼吸を開始します。次に循環のサイン(息、せき、体の動き)を確認してください。もし循環のサインがなければ、直ちに心臓マッサージを開始します。15回の心臓マッサージと2回の人工呼吸を4回繰り返します。そして循環のサインを確認します。もし循環のサインがなければ、このような蘇生処置をAED到着まで続けてください。
AEDが届いたら電源スイッチを入れ、後は音声ガイドに従って操作していただくだけです。AED操作は注意点がいくつかあるだけで、基本的には小学生でも使えるものですが、正しい判断と処置が安全にできるようになるためには講習会での練習が絶対に必要です。今後、消防をはじめとして様々なAED講習が始まると思いますがどうか積極的に受講されますようお願いいたします。

院内AED認定看護師制度

当院ではAEDを全階に配備しました。これにより、院内ではどこで心室細動が発生しても速やかに除細動が可能となりました。しかし、やはり最も大切なのは一連の素速い判断と適切な行動そして正しい処置です。そこで当院では看護師の方々に一次救命処置からAEDの使用について学んでもらい、それを筆記試験と実技試験で評価し合格すると認定証を交付すると同時に社員証に小さな赤いハートマークを付けてもらっております(写真)。

このマークの付いた看護師はすぐに医師が患者さまのもとに駆けつけることができない場合にはAEDを使用することが院長から認められております。また、当院では全職員を対象に一次救命処置の講習を定期的に行っており、あと2~3年後には全職員の講習が終了する予定です。


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