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王子総合病院

わかりやすい医学教室

腹腔鏡手術とは

2008.1 らいふNo39 
外科 狭間 一明

腹腔鏡手術とは?

腹腔鏡とは、お腹の中(腹腔)を直接観察する直径1㎝程の内視鏡です。おへその下を3㎝前後切開してお腹を炭酸ガスでふくらませてから腹腔鏡を挿入して腹腔内の様子をテレビモニターに映して観察し、さらに小さな傷を何個かつけて穴を開け、鉗子という細い器具を使用して行う手術です。

   

腹腔鏡手術の利点と欠点

利点

傷が小さい
手術によって異なりますが5~6㎝のお腹の切開と3~4個の穴ですので美容的に優れています。
術後の痛みが少ない
傷が小さいと術後の傷の痛みが少ないことが多いです。
術後の回復が早い
腸を直接さわらないので術後の腸の運動の回復が早いです。
腸閉塞が少ない
後の傷に腸が癒着することが腸閉塞の原因になります。傷が小さい腹腔鏡手術では癒着する可能性が低くなります。

欠点

視野が狭い
視野が狭い 肉眼でみるより視野が狭く、技術的な困難さが増します。出血などで腹腔鏡手術を続けるのが危険と判断した場合は途中から開腹手術に変更する場合があります。 また肥満が高度であるときや過去にお腹の手術をうけて腹腔内の癒着が予想される場合などは腹腔鏡手術の適応となりません。深部静脈血栓症(いわゆるエコノミー症候群)も起こりえます。当院では予防のために弾性ストッキングを使用しています。

外科領域での腹腔鏡手術の適応疾患

胆石症
腹腔鏡手術はまず胆石の手術で始まりました。当院でも一九九二年から行われています。現在では胆石症の術式の第一選択は腹腔鏡下胆嚢摘出術となっていますが、高度の胆嚢炎や開腹手術の既往がある場合は開腹手術をすすめています。胆嚢摘出術に伴う合併症には、出血のほか胆汁漏出や胆管損傷があります。
手術に必要な検査が終了している場合、手術の二日前に入院になります。手術は全身麻酔で行います。経過が順調であれば、手術の次の日から洗面したり食事をとったりできます。入院期間は手術の翌日から数えて四日目に退院される方がもっとも多くなっています。
胃癌
胃がんの手術方法はがんのできた場所によって異なりますが。胃の出口に近い方にできた癌の場合、胃の下部 2/3~3/4とその周囲のリンパ節を一緒に切除するのが一般的です。腹腔鏡補助下手術ではまずお臍の近傍に3㎝ほどの穴を開け、さらにお臍の周りに穴を四カ所あけてお腹の外からの操作によって胃および付近のリンパ節を切除します。その後上腹部に約5㎝の傷口をあけ、そこから切除した胃を外に取り出し、残った胃と十二指腸を吻合します。胃の上部を切除する場合や胃を全部切除する場合もありますが、どの場合でも切除する範囲や、胃と腸の吻合の仕方は開腹手術と同じです。すべての胃がんで腹腔鏡補助下手術ができるわけではなく、現在のところ早期胃がんに限って行っています。胃がんの手術に伴う合併症には、出血のほか感染や縫合不全がありますが普通の開腹手術と発生頻度はかわりません。手術の傷の痛みが少なくなるため入院期間が短くなる場合が多いです。
胃癌の手術時のきずの比較
大腸がん
大腸がんの場合もがんのできた大腸とその周囲のリンパ節を一緒に切除するのが外科手術の基本です。腹腔鏡手術では穴を4~5カ所あけて大腸および付近のリンパ節を切除します。その後腹部に約5㎝の傷口をあけ、そこから切除した大腸を外に取り出し、吻合します。切除する範囲や、吻合の仕方は開腹手術と同じです。がんが大腸の壁に深くくいこんでいたり、がんの直径が5㎝をこえるものは腹腔鏡手術の適応としていません。大腸がんの手術に伴う合併症には、出血のほか感染や縫合不全がありますが普通の開腹手術と発生頻度はかわりません。
虫垂炎
虫垂炎(いわゆる盲腸)は腹腔鏡手術のよい適応です。おへその下と下腹部に2ヶ所の穴をあけて虫垂を切除します。傷の感染が少ないため入院期間は短く、希望があれば手術の翌日の退院も可能ですが、手術後3日目に退院される方が多くなっています。炎症が強いときや腸管切除をしなければならない場合は開腹手術になります。

このほか当科でおこなっている腹腔鏡手術としては胃、十二指腸潰瘍の穿孔の手術、胃や大腸の良性腫瘍の摘出術、腸閉塞の手術、そけいヘルニアの手術、脾臓の摘出術などがあります。胆石症や虫垂炎手術は良性の病気で手術数も多いのですが、胃がんや大腸がんでは腹腔鏡手術が適応となるかどうかを学会のガイドラインに沿って慎重に選択しています。腹腔鏡手術は外科手術の歴史の中でも一番大きな革新と言われ、腹部の手術の多くに適応が拡大される可能性がありますが、現在のところがんの手術では早期がんに限って行なわれ、手術時間は開腹手術に比べると長くなります。長期的な手術成績については結論がでていませんが、手術後の経過をみますと腹腔鏡手術がからだにやさしい手術であるということは間違いなく、今後も適応を慎重に見きわめながら行っていきたいと考えています。


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