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王子総合病院

わかりやすい医学教室

神経内視鏡手術について

神経内視鏡手術とは?

消化器外科、胸部外科、婦人科、耳鼻咽喉科などの外科手術においては、患者さんへの侵襲を少なくするために内視鏡手術が行われています。脳神経外科手術の特徴は顕微鏡手術であり、その意味ではすでに十分低侵襲でありますが、内視鏡を使うことにより、見えにくい部分をよりみることができるようになりました。最近では、脳神経外科領域においても内視鏡が用いられる機会が増えています。内視鏡は小さな入り口から深い部分まで観察することができ、これを使うことによって、手術中の脳の圧迫を減らしたり、頭をあける大きさなどを格段に小さくすることができると考えられています。
実際の手技は、内視鏡で映し出された画像をテレビディスプレイで見ながら手術を行って行きます。その意味では感覚的にテレビゲームに似ており、欧米では内視鏡手術はテレビゲームにたとえられ、任天堂手術とかファミコン手術といわれることがあります。興味深いことに内視鏡を利用した手術では、テレビゲーム好きの外科医ほど腕がいいことが、米国の調査研究で発表されています。外科医三十三人に、内視鏡手術の模擬テストを実施したところ、ゲームをする人はしない人よりミスが少ないうえ、スピードも速いことが判明しました。とはいえ、手術経験や知識がなくても、テレビゲームが好きであれば手術がうまいという訳ではありません。脳神経外科領域における内視鏡手術は、技術認定制度があり、この手術を行うにあたって専門の知識や研修を積んで行います。

 

2009.4 ライフNo41 
脳神経外科 三上 毅

どのような病気に行うの?

現在脳神経外科領域において内視鏡を用いるには、内視鏡だけをたよりに手術を行う場合と、顕微鏡手術の際に内視鏡を補助的に使う場合があります。場所としては、脳室だけではなく、頭蓋内外、脊髄脊椎、末梢神経などあらゆる場所に適用されています。内視鏡だけをたよりに行う手術は、水頭症、脳室内の腫瘍、脳出血、下垂体腫瘍、脊椎の疾患、末梢神経などがあり、内視鏡を補助的に使う手術としては、脳動脈瘤の手術などに有効です。当院では特に脳出血や下垂体腫瘍の手術に内視鏡を用いています。使われる内視鏡や手術器具は疾患や手術の方法によって異なり、手術機器の発達は不可欠な問題です。最近のハイビジョン画像や硬性小物(専用の手術器具)の開発は目まぐるしいものがあり、一世代前と比較するとより安全な手術が可能になってきています。

利点と欠点は?

従来法と比較し狭い術野で展開していく内視鏡手術は、より低侵襲で体の負担が少ない手術です。もちろん欠点のないものなどありません。他の内視鏡手術と同様に止血困難に陥った場合は、従来法に切り替える必要がある場合もあります。しかしながら、出血に対する対応は止血器具の開発が進んだこともあり、以前よりは楽になってきています。また、当然ながら利点や欠点は患者さんによって、個々に異なります。内視鏡手術が必要な病気を指摘された場合は、担当医とよく相談してください。
以下に実際の内視鏡手術のケースをお示しします。

Fig.1 脳出血に対する神経内視鏡的血腫除去術

 

 

左下: CTで役50mlの右被殻出血をみとめました
右上: 右前頭に小さな穿頭を行います
左下: 血腫に向かって内視鏡用のシースを挿入します
右下: 血腫を少しずつ除去していくと、周囲の脳がシース越しにみえてきます

 

Fig.2 下垂体腫瘍に対する内視鏡的経鼻下垂体腫瘍摘出術

 

 

左下: MRIで下垂体線種を認めました
右上: 経鼻的にアプローチして、副鼻腔を開けます
左下: 鞍底部を開けると、硬膜がみえてきて、この硬膜を切開すると腫瘍に到達します
右下: 腫瘍を切除しているところです

 


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