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王子総合病院

わかりやすい医学教室

子宮癌について

一口に子宮がんといっても大きく2つのがんに分けて考える必要があります。 まず始めに子宮頸がん。これは子宮の入り口にできるがんで、一般的に子宮がんといえば子宮頸がんを指します。これに対して子宮の奥にできるのが子宮体がんです。生活習慣の欧米化に伴って子宮体がんは増加傾向にあり、現在では子宮がんのうちほぼ半数が子宮体がんといわれます。

 

2010.1 ライフNo44 
産婦人科 野村 英司

子宮頸がん

子宮頸がん患者数は近年増加?横ばい傾向にあるといわれていますが、世界では若い女性のがん死亡の第2位、また日本では毎年7000人が子宮頸がんと診断され2500人が死亡します。子宮頸がんはヒトパピローマウィルスというウィルスの感染によって起こるといわれており、いわば性病の範疇に入ります。感染からがんに至るまでに約10-20年かかるといわれており、従って子宮がん検診を定期的に受けていればほぼ100パーセント早期発見が可能です。性行動が活発化する10-20代にこのウィルスが感染するとだいたい40歳代で発症することになります。実際の統計的な子宮頸がんの好発年齢は30-40歳代です。次のような事に心当たりのある人は一度婦人科受診されることをすすめます。 セルフチェックしてみてください

  1. 今まで経験したパートナーの数が多い
  2. 今までにがん検診を受けたことが無い
  3. 最近常に出血しているわけではないが時々茶色い帯下が断続的に下りる
  4. 年齢が30代後半から50代前半である

子宮頸がんワクチン

子宮頸がんがウィルス感染によって生じることから、インフルエンザワクチンと同様に近年子宮頸がんワクチンなるものが開発されました。すでに世界では100カ国以上で採用されておりますが、日本では今年12月頃には接種可能になるものと思われます。インフルエンザワクチンと違って子宮頸がんワクチンは接種後の効果は10-20年続くというもので毎年受ける必要はありません。このワクチンが広く普及すれば近いうちに子宮頸がん患者は劇的に減少するのは間違いないですが、日本では自費(高価)であることが難点です。公費補助している国はたくさんありますが、日本でも早く導入されることを望みます。

子宮体がん

子宮頸がんがウィルス感染が原因となって発病するのに対して、子宮体がんの原因として最も関わりが深いといわれているのが女性ホルモンです。これは女性を女性たらしめている最も重要なホルモンですが、人の体に強く作用すると子宮体がんや乳がんの発生に促進的に働くといわれています。
若い頃より生理不順の50代の女性に子宮体がんが多いのはこのためです。
女性ホルモンは主として卵巣から分泌されるホルモンですが、体脂肪組織からも分泌され、子宮体がんが太った女性に多いのはこのためです。子宮体がんは閉経後の女性に多いのは確かですが、その20パーセントは閉経前に発病しています。次のような事に心当たりのある人は一度婦人科受診されることをすすめます。

  1. 年齢が50-60代である
  2. もうそろそろ閉経になるが、最近生理不順である
  3. どちらかというと太ってい
  4. 若い頃は生理不順であった
  5. 子供ができなかった
  6. ダラダラと断続的な不正出血が一ヶ月以上続いている

この中で最も重要なのは6の不正出血です。

上述したように子宮頸がんでも子宮体がんでも不正出血が一つのキーワードになりますが、それぞれの癌で全く意味合いが異なってきます。子宮頸がんの場合ある程度進行しなければ不正出血は起こりません。不正出血は子宮頸がんの早期発見の指標にはならないばかりではなく、ある程度進行している証拠でもあります。したがって子宮頸がんを早期に発見するには定期的な癌検診しかありません。現在は20歳以上であれば市の検診が受けることができますので機会を逃さず、受診することを勧めます。
また子宮体がんの場合、子宮頸がんとは対照的に 極めて早い時期から不正出血が症状として現れます。結果的に子宮体がん患者の多くはⅠ期で発見され、全体の5年生存率も80パーセント以上と予後も良好です。しかし早い時期から症状が出るため、体がん検診をしても必ずしも100パーセント発見できるわけではありません。閉経間近あるいは閉経後で不正出血のある女性は、不正出血のあるかぎり何度でも婦人科を受診することをすすめます。
最後に不正出血という言葉ですが、これにはいろんな状況が含まれます。単なるホルモンのバランスが崩れて生じる生理不順もある意味不正出血と認識されることがあります。子宮がんにおける不正出血とはどういう感じなのか、最後に書き加えておきたいと思います。子宮がんにおける典型的な不正出血とは量は多くはなく常にあるわけではないが ときには茶色の帯下、ときには黒い帯下、ときには赤い出血が断続的に一ヶ月、二ヶ月続く場合。
もし上述の不正出血に心当たりがあれば明日、婦人科に行きましょう。


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