文字サイズ
背景色
  • お知らせ
  • フロアマップ
  • アクセス
  • お問い合わせ

王子総合病院

わかりやすい医学教室

ワクチン無料化に向けて

2011.1 ライフNo48 
小児科 小林 徳雄

大切なこどものために、家族はあらゆる手をうってでも健やかに育てたい、そう祈ってるはずです。しかし、大事に育ててきた子どもが、外からの敵、病原微生物に侵され、そのために苦しみ、さらには命をとられてしまうこともあります。これは、自分がいくら気をつけていても、どうにもならないこともあります。流行があると、気付かないうちに病原体が迫ってくるのです。
病気を防ぐための方法として、ワクチンがあります。ワクチンが効く理由は2つあります。一つは、ワクチンをうつことで、その本人に抵抗力がつくことです。もう一つは、ワクチンをうった人が増えることで、周辺地域全体で流行が起こらなくなる、ということです。残念ながらワクチンをうてない子供たちがいます。もともと持病があってワクチンがうてない子の保護者は、常に感染症におびえています。そして、赤ちゃんも接種可能になる年齢まではワクチンがうてません。そういった子どもたちを守るためには、皆がワクチンをうつことが大切なのです。
ワクチンをうつには、時間と手間、そしてお金がかかります。現在、表1にあるワクチンは、公費助成の対象になっていて、無料でうてます。これらのワクチンでは、苫小牧での接種率はここ数年で90%を超えるようになってきました。とは言え、将来にわたって地域に流行を作らないためには、さらに数%の上積みが必要です。

  助成対象となる年齢 標準接種回数
BCG 3カ月から5カ月 1回
三種混合(DPT) 3カ月から7歳5カ月 4回
二種混合(DT) 11歳~12歳 1回
麻疹・風疹(MR) ① 1歳
② 小学校入学前の1年間
合計2回
ポリオ 3カ月から7歳5カ月 2回
(日本脳炎は通常北海道では接種されていない)

それでは、有料のワクチンはどうでしょうか。正確な接種率はわかりませんが、50%くらいではないかと推定されます。必要なことはわかってはいても、高額だとなかなかワクチンはうてません。それらは、表2にあります。水痘と流行性耳下腺炎は、ず~っと感染者が途切れず、苫小牧市内で、週に2ケタの子供がかかり続けています。

  助成対象となる年齢 標準接種回数
水痘(みずぼうそう)    
流行性耳下腺炎
(おたふくかぜ)
   
インフルエンザ   小学校まで2回
中学校から1回
(必要があれば2回)
B型肝炎   3回
(新型インフルエンザに対しては、平成22年度は、所得に応じて助成あり)

その他にも、有料のワクチンがあります。ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンです。この2つは小児の細菌性髄膜炎を起こす代表的な菌に対するワクチンです。おおよそ、1000人に2~3人くらい、かかります。苫小牧市民としての年間出生数は1500人くらいですから、同じ年に生まれた児の2~3人がかかるということです。医学が進歩しているとはいえ、いまだに死亡率は2~6%、後遺症を残す率は10~30%です。ヒブワクチンは2008年12月から、肺炎球菌ワクチンは2010年3月から、日本でもうてるようになりました。また、2010年4月から、2009年4月以降に出生したこどものヒブワクチンへの助成が始まり、接種する子供の数が増えてきました。
もうひとつ、新しいワクチンに、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンがあります。これは、そのウイルスが起こす病気から、子宮頚がんワクチンとも呼ばれます。ワクチンでがんの発生を低下させることができる、画期的なものです。ただ、1回1万5千円を3回、とても高いものです。
そこで、苫小牧市も助成に向けて動いていたところではありましたが、医師会と小児科学会が国に対して、ヒブ、肺炎球菌、子宮頚がん、水痘、流行性耳下腺炎、B型肝炎のワクチンの公費助成を求める署名活動を行うことを提案しました。それに参加して、2010年9月から10月にかけて、当院外来と、100周年記念講演会の会場で、たくさんの保護者の方、一般の市民からご署名をいただきました。この紙面を借りてお礼を申し上げます。その甲斐があって、近々、ヒブ、肺炎球菌、子宮頚がんの公費助成に向けての暫定制度がスタートする見込みとなりました(事実上、始まるということです)。この原稿を書いている現時点では具体的なことはまだ分かりませんが、このライフ新年号が発行される頃には、目処が立っている、あるいはすでに公式に発表になっているかもしれません。ぜひ、公的な制度を利用して、必要なワクチンをうつようにしてください。

  助成対象となる年齢 標準接種回数
ヒブ 0~4歳  
肺炎球菌 0~4歳  
HPV(子宮頚がん) 中学生、高校1年生 3回
(あくまで見込みですので、変更になるかもしれません)

わかりやすい医学教室