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王子総合病院

わかりやすい医学教室

膀胱炎とは?

膀胱は腎臓で作られた尿を一時的にためておく袋状の器官で、下腹部の中央に位置しています。膀胱内に尿がたまると尿意を感じ、膀胱が収縮することで排尿することができます。膀胱炎は尿道から膀胱内に侵入した菌が膀胱内の粘膜に付着・定着し炎症を起こす疾患です。女性に多く、排尿時痛や残尿感など排尿に関する症状が出現しますが、発熱をきたすことはありません。膀胱粘膜は通常は肌色の平滑な粘膜ですが、炎症を起こすと赤く不整な粘膜となります。

 

2013.4 らいふNo58 
泌尿器科 栗村 雄一朗

原因

膀胱炎は、外界から膀胱内に侵入した菌によって引き起こされます。大腸菌が原因菌であることが多いですが、様々な菌が原因菌となりえます。解剖学的に女性は外尿道口と膀胱の間の距離が短いために外陰部の細菌が膀胱内に侵入しやすい構造をしています。そのため膀胱炎は女性に多く発症します。
通常は膀胱内に少数の細菌が入っても、膀胱粘膜に備わっている防御機能や尿の流れに伴う自浄作用によって細菌が洗い流されてしまうため、細菌が膀胱内に定着せず膀胱炎になることはありません。しかし、無理に排尿を我慢したり、冷えなどによって防御機能が低下したりすると、細菌が膀胱粘膜に定着しやすくなり膀胱炎が引き起こされます。
膀胱炎の重要な誘因としては、性行為と閉経があります。性行為は会陰部に付着した細菌を尿道内に押し込んでしまうため膀胱炎になる危険性が高くなります。また閉経すると、女性ホルモン(エストロゲン)が分泌されなくなるために膣内の環境が変化し膀胱炎になりやすくなります。
男性は尿道が長く細菌が膀胱まで侵入しにくいため、排尿状態が悪くない男性に膀胱炎がおこる事はほとんどありません。よって男性に膀胱炎の症状がでた場合は、前立腺炎、尿道炎、膀胱癌、前立腺癌、尿路結石など膀胱炎以外の病気の存在や、また前立腺肥大症などで排尿状態が悪くなっていないか検査する必要があります。

症状

膀胱炎の症状としては、排尿時または排尿後にしみる感じや疼痛がある(排尿不快感、排尿時痛)、トイレへ行く回数が増える(頻尿)、排尿後にもまだ尿が残った感じがする(残尿感)、尿意が我慢しきれない(尿意切迫感)などがあります。膀胱炎のみで発熱をきたすことはなく、発熱があった場合は急性腎盂腎炎などの疾患に進展している可能性があります。急性腎盂腎炎まで症状が進展してしまった場合は入院治療が必要になることもあります。

診断

膀胱炎は、採尿した尿を遠心分離機にかけて、膀胱炎の原因となる細菌や炎症の細胞である白血球が尿中にいないかを顕微鏡で確認すると、すぐに膀胱炎の可能性があるかが判明します。また同時に尿の培養検査を行うことによって膀胱炎の原因菌を明らかにすることができます。培養検査は結果が判明するまでに数日かかりますが、抗菌薬治療の効果がなかった際に原因菌に適した抗菌薬に変更することによって、確実に治療することができます。

治療

初期の膀胱炎の場合は飲水により尿量が増えただけで自然に治ってしまうこともありますが、膀胱炎が完成してしまった場合は抗菌薬を服用する必要があります。通常の膀胱炎であれば、抗菌薬を3~7日間ほど内服します。飲み始めて数日で症状は消失しますが、再発を予防するために最後まできちんと抗菌薬を服用する必要があります。抗菌薬をきちんと服用しても症状が改善しない場合や、一旦は症状が改善するもののすぐに同じ症状が出現する場合は、膀胱炎以外の病気がないか詳しく検査をする必要があります。

膀胱炎の予防

膀胱炎の予防には、膀胱内に菌を侵入させない事と膀胱内に侵入した菌を定着させない事が重要です。
菌を侵入させないためには、外陰部を清潔に保ち、肛門付近の菌を尿道内に侵入させないようにしましょう。また、性行為の前後や排便後などは入浴やシャワーで外陰部を清潔に保つようにします。排便後にトイレットペーパーを使用する際「後ろから前へ」拭くと、肛門付近の細菌を尿道口に押し込んでしまうことになるので「前から後ろへ」拭くように心がけましょう。
菌を定着させないためには、水分を多めにとり尿をたくさん出し膀胱内の細菌を洗い流すようにする事が重要です。尿意を感じたら我慢しないで排尿するとで、膀胱粘膜への定着を阻害し菌数を減少させる事ができます。また、過労や冷えは自己免疫機能の低下をきたし、菌が膀胱に定着しやすくなります。睡眠を十分にとり規則正しい生活を心がけましょう。また下腹部や下半身を冷やさないようにしましょう。

膀胱炎にはらないためのポイント
 水分 水分を多くとりましょう
 排尿 尿意を我慢しないで排尿しましょう
 清潔 外陰部は清潔に保ちましょう
 過労 疲れをためないようにしましょう
 トイレ(排便時) 「前から後ろへ」拭きましょう

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