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王子総合病院

わかりやすい医学教室

点検!放射線治療部門 その後

5年前、本誌2009年1月号に「点検!放射線治療部門」と題して、当院の放射線治療部門の状況について報告したことがあります。日本放射線腫瘍学会(JASTRO)が2005年におこなった「全国放射線治療施設構造調査」の結果を参考にしました。その後、新たに「2010年の構造調査」が発表され、現在では2012年の調査の解析が進行中のようです。当院では放射線治療機「ライナック」の更新があり、2009年2月末で放射線治療を休止。周辺機器も整備して2009年8月に再開。新しい機能も加わり、放射線治療業務にいそしんでまいりました。その間、スタッフの増員などもありました。今回は「その後」と題して、ごく簡単に5年前と今とを較べてみたいと思います。

 

2014.4 らいふNo61 
放射線治療科 北原 利博

当院の放射線治療実患者数(表1)

年間実患者数(新患+再患)は2007年をピークに減少し、その後は280人前後で推移しています。2008年に苫小牧市立病院で放射線治療が開始になったことが大きいと思います。2009年の当院休止期間にはお世話になりました。当院のようなライナック1台の施設では、300人を超えないことが望ましいと言われており、よい傾向だと思います。

構造調査2005年と2010年の比較(表2)

全国の患者数は5年間で20%増えたようです。2005年当時、当院の患者数は、北海道、関東の平均値に次いでおり、他の地域の平均値を上回っていましたが、2010年では信越・北陸、中国、四国の3地域の平均値を上回るのみで、東北、東海、近畿、九州・沖縄に抜かれてしまっています。2012年の結果も変わらないかもしれません。それにしても(当院も計算にはいっているのに)、北海道の施設の患者数が多いのは、札幌市内の施設の患者数がものをいっているのだと思います。

マンパワー(表3)

念願の「放射線治療室担当の看護師」が実現しました。「外来放射線治療加算」をいただけることになりましたが、治療担当技師も本来の業務に専念できるし、なにより毎日通ってこられる患者の皆さまにきめ細かく対応できるようになって大変うれしく思っています。

設備・治療技術(表4)

放射線治療計画のためには、フラット天板、投光器などを備えたCTが必要です。当院では地下1階のCTですが、年間280人、350部位に、550回ほどの治療計画と投光のためにこのCTを1100回使用します。それだけでは朝から夕方までは埋まらないので、診断用にも使っています。この治療計画によって行う治療を3次元放射線治療といい、日本のどこでも「ごく一般的な」技術になっています。肺がんなどの定位照射に用いられるSBRTは2009年のライナック更新の際に周辺機器が整い、施設基準を満たしたため、施行できるようになりました。同時に前立腺がんなどにIGRTができるようになりました。この新しいライナックはIMRT対応機であり、施行の要件である「医学物理士」も常勤していますが、肝腎の「治療医常勤2名」の基準を満たしておらず、施行していません。宝の持ち腐れ。何とかしたいものです。あとひとり、なのですが。

おわりに

放射線治療に7週間、毎日通ってくる患者の皆さま、おつかれさまです。玄関から治療室まで遠くて申し訳ありません。治療が終わりましたら経過観察のため、1~3カ月ごとの定期受診をお願いします。本誌は年に4回の発行です。来院の折、また手にとってお読みください。


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