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王子総合病院

わかりやすい医学教室

高血圧について

2015.01 らいふNo64 
循環器内科 大畑 純一

 

高血圧って?

みなさん、高血圧ってどんなイメージを持っていますか? 日本では30歳以上の男性の60%、女性の45%が高血圧であるといわれているありふれた病気です。にも関わらず血圧が高いと「具合が悪くなる」「頭痛がしたり肩がはったりする」「突然倒れたりしておっかない」こんなふうに思っている方は多いですよね。実はどれも高血圧に対する間違ったイメージです。
そもそも、血圧ってなんぞやってことですが読んでそのまま「血の圧」です。水圧が高いっていうとイメージが湧くと思いますが水道ホースに入った水が勢い良くホースの中を流れている状態を思い浮かべますよね。血圧が高いっていうのも同じです。血液が通っているのは血管ですので血管の中を血液が勢い良く流れているのが高血圧です。血管というのは結構丈夫にできているので血液がかなり速い勢いで流れていてもそう簡単に破れたりしません。ところが血圧が高いと血管の壁は強く押されているので徐々に血管の壁が傷ついてきます。そうするとその傷ついた血管にコレステロールなどの色々な物質がくっついてきて血液の通り道が狭くなっていきます。これがいわゆる「動脈硬化」というものです。どんどん血液の通り道が狭くなると最後には詰まってしまいます。脳の血管が詰まったら脳梗塞ですし心臓の血管が詰まったら心筋梗塞や狭心症となります。つまり血圧が高い状態が数ヶ月、数年と続くうちに動脈硬化が進み脳卒中や心筋梗塞になってしまうため血圧を下げることでこれらの病気にならないように予防するのが高血圧治療の目的となります。
今回は今年日本高血圧学会より発表された「高血圧治療ガイドライン2014」にそってお話したいと思います。

血圧値の目標

それではそもそも血圧がどのくらい高いと高血圧というのでしょう。血圧測定というのはかなり昔からされてきたためどのくらいの血圧の人が動脈硬化の病気になりやすいかわかっています。また収縮期血圧(上の血圧)を10mmHg下げると脳卒中は30数%、心筋梗塞や狭心症は20数%減ることがわかっています。
血圧の目標値は「高血圧治療ガイドライン2014」に示されていますが基本は140/90mmHg未満とすることが推奨されており年齢や他に動脈硬化になりやすい病気を持っているかなどで多少変わりがあります。「日本人間ドック学会」で高血圧の基準は147/94mmHg未満としていますが脳卒中や心臓病の予防の観点より日本高血圧学会が推奨している140/90mmHg未満が正しいものだということを強調しておきます。
しかしこの目標値はあくまでも病院に来て診察室で測った値の目標値です。最近は血圧計を購入し家庭血圧を測定している人も多いと思います。大概、家庭血圧は診察室の血圧より低くなりますので目標値も5mmHgずつ低い値となります。
また血圧は精神状態や肉体的な疲れなどで変動します。日々の血圧の上がり下がりに一喜一憂する必要はありません。大切なのは平均した血圧の値です。先ほどのガイドラインでは家庭血圧の計測は一度に2回行いその平均値を血圧値として用いるとなっています。時間帯は起床後1時間以内(朝食前)と就寝前の2回測定が推奨されています。
自分は高血圧なのではないか? 血圧の薬を飲んでいるんだけど今の血圧で大丈夫か?
など心配な方は是非家庭血圧を測定記録し主治医に診てもらうことをお勧めします。

高血圧の治療

血圧が高いと将来動脈硬化になるのでその予防のために血圧をある程度まで下げることが重要であることは理解していただけたと思います。実際血圧が高い方はどのように下げたら良いのでしょうか。私たちが最初にお勧めするのは食事で塩分量を減らすことです。体の中に塩分が多く入ると血圧が上昇することが知られております。推奨は一日塩分量が5g以下です。また規則正しい食生活や適度な運動などは血圧の安定に良いと思われます。
しかし、食事や運動だけで目標血圧に到達する方は少なくやはり薬を必要とします。
血圧の薬も以前と比べ進化しています。たとえば血圧の薬は一日を通して安定して効果があるものが推奨されますが最近のものはほとんど1日1回で24時間持続するものがほとんどです。また副作用も少なくなっています。さらにほとんどの高血圧の薬が血圧を下げるほかに別の作用も持っています。たとえば腎臓を保護する効果があったり、心臓の血管を広げる効果があったり脈拍を抑える効果があるものもあります。したがって血圧の薬はその個人個人にあったものを医師と一緒に選んで行く作業が必要となります。
最後によく聞く質問ですが「血圧の薬って一度飲み始めたら一生飲まなきゃならなくなるんでしょ?」というものです。これはある意味間違ってはいません。高血圧の原因はほとんどが加齢や生活習慣によるものです。したがって血圧の薬を飲めば癌が消えたみたいに高血圧が治ったなどということはないのです。止めるとまた血圧が上昇します。しかし薬を一生飲むのが嫌だから飲まないというのは裏返すと血圧が高いまま放置しておくということです。その結果心筋梗塞や脳卒中などになる可能性が数倍になります。

ぜひとも、検診やどこかで高血圧を疑われている方は受診し治療を受けることをお勧めします。


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