文字サイズ
背景色
  • お知らせ
  • フロアマップ
  • アクセス
  • お問い合わせ

王子総合病院

わかりやすい医学教室

変形性膝関節症

2015.07 ライフNo66 
整形外科 西尾 悠介

健康寿命と関節疾患

超高齢社会を迎えた現在、健康寿命を保つことが重視されています。健康寿命とは介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間のことです。要介護や要支援の原因には関節の疾患の割合が多くあり、関節の疾患の中でも膝の変形性関節症は頻度の高い疾患です。変形性膝関節症を予防、治療することは健康寿命の維持に大切です。

膝関節の構造と変形性関節症

膝関節は、人体で最も大きな関節で大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿)の3つの骨が組み合わさってできています。すねの骨の上を太ももの骨が滑り転がることによって曲げ伸ばしができるのですが、クッション性のある柔らかな軟骨や潤滑油である関節液、大腿骨と脛骨の間にある衝撃吸収材の半月板により滑らかな摩擦のない動きが可能となります。
膝関節は長年使っていると、軟骨や半月板がすり減ります。徐々に軟骨の下の骨も硬くなったり棘ができたりします。そして関節の表面がデコボコに変形し、滑らかな動きが障害されて、生じた炎症から痛みを出すのが変形性膝関節症です。

変形性関節症の原因、症状

変形性膝関節症の原因は、加齢に加え、肥満、筋肉の衰え、もともとのO脚・X脚、
体質や遺伝、肉体労働やスポーツなどによる膝への過負荷、膝周辺の外傷などが挙げられます。 日本人にはO脚が多く、体重のかかり方から内側の軟骨ばかりが減りやすく、内側の軟骨が擦り減ると、さらに内側に体重がかかりやすくなり、O脚変形が強くなっていくのが特徴です。
症状は動き出し時の痛みや階段昇降での痛みが多いです。病期の進行に伴って歩行時の常時の痛みや曲げ伸ばしの制限、膝の腫れ、O脚の進行や、歩行のバランスの悪さなどが出現し生活の質を落とします。

変形性関節症の治療

治療には進行を遅らせたり、症状を緩和させたりする保存療法と、手術療法の2つがあります。
保存療法には、減量(肥満傾向の人)、正座等和式の生活や過度の階段昇降を控えるといった日常生活動作の指導、杖や膝にかかる体重バランスを変える中敷きといった装具療法、痛みや炎症を抑える薬物療法、ヒアルロン酸の関節注射、膝関節への負担を減らす太腿の筋力訓練などがあります。飲むヒアルロン酸やコンドロイチン、グルコサミンなど、サプリメントの宣伝が盛んですが、腸で吸引され膝に行くかどうかは証明されていません。
こうした保存療法で十分な症状の改善が得られず、レントゲンでも進行している方には手術療法を考慮します。レントゲンでの進行度や年齢や活動性によって手術法はいくつかあります。関節を温存して体重のかかるバランスを内側から外側に変える高位脛骨骨切り術、傷んだ関節表面を全て金属に変えてしまう人工関節全置換術、悪いところだけ金属に変えて傷みの少ないところは残す人工関節単顆置換術等があります。
曲げ伸ばしの制限が強い、O脚の変形が強い、体重をかけるとO脚が余計進行する等の末期の変形性膝関節症の患者さんには主に人工膝関節全置換術を適用します。

人工膝関節全置換術

人工膝関節全置換術によりO脚の矯正、曲げ伸ばしの改善、痛みのないバランスのよい膝を期待することができます。正座等の和式の生活は難しいことが多い、激しいスポーツは推奨できないといった点はありますが、旅行に行ったり、ハイキングをしたり、ゴルフやテニスや卓球といったスポーツを楽しんだり活発で活動的な生活を送ることは十分に可能で生活の質を高めることが期待できます。

膝が悪くても生命の問題に直結するわけではありません。しかし、健康寿命を考えると膝が悪いと健康寿命の短縮には密接に繋がります。自分で動ける、高い生活の質を目指して、膝のことでお困りの方は是非整形外科でご相談ください。


わかりやすい医学教室