文字サイズ
背景色
  • お知らせ
  • フロアマップ
  • アクセス
  • お問い合わせ

王子総合病院

わかりやすい医学教室

C型肝炎治療について

2015.10 らいふNo67 
消化器内科 奥田 敏徳

肝機能異常を指摘されたら

健康診断などで、肝機能異常を指摘されたことはないでしょうか。AST(GOT)、ALT(GPT)、これが肝臓の細胞が壊れたときに血液中に出てくる酵素です。値が高いと肝炎が疑われます。さらに、慢性肝炎はこれといった自覚症状がないのが特徴です。肝機能異常を指摘された方、2次検査としてその原因を調べたでしょうか。数値が高い状態が続くと、何となくだるい、足にむくみが出てくる、顔に血管が浮いてくる、こむらがえり(足がつる)、尿が濃くなるなどといった症状がみられてくることがあります。これらは病気が進行して肝硬変になっているときにも認める症状です。健康診断の採血結果を見直してみましょう。
肝炎と肝硬変そして肝がん?肝炎ウイルス検診を受けましょう?
肝炎とは肝臓の細胞に炎症が起こり、肝細胞が壊される病態です。その原因には、ウイルス、アルコール、脂肪性肝疾患、自己免疫性肝疾患、代謝疾患などがありますが、日本においては、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルス感染による肝炎がその多くを占めています。長期の慢性肝炎で細胞が壊れ続けると、それを埋める形で肝臓の線維成分が蓄積します。これを線維化といい、線維化が進行して肝臓が硬くなった状態が肝硬変です。肝硬変になると肝がんだけでなく、食道静脈瘤の破裂や肝性脳症など命に関わる重大な合併症が起こりやすくなります。
また、困ったことにB型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスは、目立った肝機能異常を来さず、潜んでいる場合があります。肝機能異常を指摘されていなくとも、肝炎ウイルス検診を必ず受けてください。
さて、今回は、C型肝炎についてお話しさせて頂きます。

C型肝炎治療に大きな変化が

 C型肝炎の治療に、大きな変化、革命的なことが起こりました。ご存じの通り、インターフェロン(IFN)を使用しない経口の抗ウイルス薬での治療(IFN free治療)が始まりました。

効果はほぼ100%といっても良いぐらい治療効果の高い治療です。さらに、C型肝炎ウイルスが存在すれば、男女問わず、高齢者(65才以上)、既存の治療に効果が無かった方、そして肝硬変の状態の方すべてが治療対象です。これらは、従来の治療法ではありえなかったことです。ただし、現時点では、肝硬変のなかでも非代償性肝硬変の方、腎機能が低下している方の一部は適応外ですが、臨床試験中の薬剤が複数あり、近い将来にはさらに広い適応となる抗ウイルス薬が登場してくる予定です。通院中でない方は、一度外来を受診してください。

C型肝炎について

C型肝炎ウイルス(HCV)は、1989年米国のChooらによって発見されました。現在、本邦のHCV感染者は150万?200万人存在すると推定されています。HCV感染が持続すると、ウイルスの自然排除は期待できず、炎症の持続により肝硬変さらに肝がんへと進展し命が脅かされる状態となります。特に高齢者では発がんのリスクが高まるとの報告がございます。

C型肝炎の治療目標

C型肝炎の治療目標は、HCV持続感染による肝がんの発がんおよび肝疾患関連死を防止することです。まず初めに抗ウイルス療法を行い、HCVの排除を目指すことが望まれます。

IFN free 治療 ~1型にも2型にも~

HCVに対する治療薬は、近年飛躍的に進歩してきています。特にウイルス蛋白を直接標的に開発されたDirect Acting Antivirals(DAAs)が登場しました。異なる作用機序のDAA製剤を併用することにより、IFNの効果が低いゲノタイプ 1型、前治療無効例、高齢者や合併症によりIFNが使用できなかった不適格例・不耐容例に対しても、副作用が少なく、かつウイルスに対する高い有効性が期待されています。
ゲノタイプ 1型の治療が注目されてきましたが、ゲノタイプ 2型についても、IFN free 治療であるソホスブビル+リバビリン併用療法が承認され、初回治療・再治療ともに第一選択となりました。

今後の問題点 ~ウイルス排除で治療終了?~

ウイルスの排除は感染症としてのC型肝炎の治癒ですが、それは肝疾患としての治癒ではありません。その後の経過観察が重要です。長期的予後改善のためにはHCV排除成功後の発がんについて、これまで以上に注意していく必要があります。  肝機能障害を指摘された方、2次検査を受けましょう。肝臓に障害を与える原因がわかれば、それを取り除く治療を受けましょう。その後は、定期的に検査(発がんの有無)を受けましょう。

まとめ

  • 肝機能障害を指摘された方、2次検査を受けましょう。
  • 肝臓に障害を与える原因がわかれば、それを取り除く治療を受けましょう。
  • その後は、定期的に検査(発がんの有無)を受けましょう

 

『らいふ』に掲載されたわかりやすい医学教室が、王子総合病院のホームページからみることができます。肝疾患については、「非アルコール性脂肪性肝疾患について」「肝臓病について」が過去の記事として掲載されています。ぜひ、のぞいてみてください。


わかりやすい医学教室