こんにちは耳鼻咽喉科です。当科外来にて身近で、頻度が多いと思われる2疾患についてまとめました。お時間のある時にご覧になって頂けると幸いです。
耳の痛みやかゆみでお悩みではないでしょうか?耳が痛くなる病気、というと中耳炎を心配されるかもしれませんが、成人の方で最も考えられる病気は「外」耳炎です。耳に違和感がある状態が続くなら、早めに耳鼻科を受診することをおすすめします。「外耳炎とはどのような病気、症状なのか?」「何が原因なのか?」「どんな治療方法があるのか?」といった、外耳炎に関する情報をまとめてみたいと思います。いつまでも健康な耳を維持するために、正しい知識を身につけておきましょう。
耳の穴から鼓膜までを「外耳」と呼び、この部分に炎症が起きることを「外耳炎」と言います。外耳炎になると耳に痛みを感じますが、特に引っ張ったり押したりすると強く痛むことが多いです。その他の症状として、耳から滲出液・膿が出て来る(耳漏、耳だれ)や痒み、耳の中が腫れて詰まったような感じ(耳閉感、難聴)を生じることもあります。もし、2~3日経っても症状がおさまらないなら、耳鼻科での診察、治療が必要です。特に、糖尿病や免疫疾患を持っている人は難治化しやすいので、注意が必要です
では、なぜ外耳炎になってしまうのでしょうか? 外耳炎の原因として最も多いのが「耳掃除のしすぎ」です。外耳道の奥は皮膚が薄く、少しの刺激でも傷ついてしまう可能性があります。耳掃除の際に強くひっかきすぎて外耳を傷つけてしまうと、細菌感染が起こり外耳炎を発症する危険性が高くなります。
傷ついた状態でさらに耳掃除を繰り返したり汚れた手で耳を触ることで、炎症が悪化していきます。「耳掃除が好き」という人も多いと思いますが、あまりやり過ぎるのは良くないということを覚えておきましょう。耳掃除はお部屋の掃除とは違い、やればやるほどきれいになる、と言ったことはなく、通常1~2週間に一度程度で十分です。
外耳炎を耳鼻科で治療する場合、まず吸引器などで分泌物を外耳道から取り除きます。「耳が聞こえにくい」という症状がある人は、多量の分泌物が外耳道をふさいでしまっている可能性があり、この処置によって聴力の回復が見られるかもしれません。耳から分泌物を除去した後は、抗生剤や副腎皮質ステロイドを含む軟膏や点耳液を使用します。重症な場合は飲み薬として1週間ほど抗生剤が処方されることもあります。通常の外耳炎であればこれらの治療法で回復していきます。しかし、最も重要なのは、当面(1?2週間程度)耳掃除を控えること、これが最も重要な治療となります。繰り返しになりますが、耳掃除のしすぎは外耳炎を引き起こし、悪化させることがあります。しすぎないよう注意が必要です。
図:赤くなり、分泌液で湿っている外耳道。鼓膜は問題ありません。
多くの方が経験ある鼻血。なかなか止まらなかったり、繰り返し出たり、耳鼻科を受診する方も少なくありません。しかしその多くは自分で止血することができます。ここでは正しい知識を身につけて、いざという時慌てなくて済むようなポイントを解説します。
ほとんどの鼻血は外傷や鼻をこする、鼻をかむ等の外的な要因があっておこります。出血の部位は鼻中隔(左右を仕切る壁)の前方、キーゼルバッハ部位(図参照)からのケースが8割以上といわれています。キーゼルバッハ部位は鼻粘膜の動脈が集まる終着点にあたるため、血流が豊富で出血しやすいと考えられます。慢性的に出血を繰り返す場合(出血後、数日以内に出血を繰り返す場合を除きます)、原因となる別の病気の可能性もあるため、詳しく調べる必要があります。
鼻を観察し、出血点を探します。キーゼルバッハ部位からの出血であればすぐ確認できますが、奥から出血した場合、内視鏡を用いて調べます。それでも出血点が特定できない場合もあります。
基本は圧迫止血です。右上のイラストのように、まず座った状態でうつむき気味になり、指で鼻をつまむようにします。つまむ位置は上の硬い部分ではなく、小鼻の柔らかいところを指の腹で、鼻中隔のできるだけ広い範囲を圧迫するようにします。これを5分間続けます。血液をサラサラにする薬を内服している場合は、10分くらい圧迫します。それでも止まらないときは病院を受診しましょう。
病院では出血点が確認できれば、止血剤の使用や粘膜処置によって止血します。問題は出血点が特定できない場合です。ガーゼを詰めて止血可能なこともありますが、困難な場合は入院が必要になることもあります。
止血後も鼻の刺激により再出血する可能性が高いため、3日間は出来るだけ鼻に触れないようにします。鼻をかむことは禁止、洗顔の時も鼻の周囲はそっと洗うようにしましょう。
図:キーゼルバッハ部位 鼻のついたて前方に血管が密集した場所があります。