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王子総合病院

わかりやすい医学教室

高精度放射線治療と看護学校

2018.04 ライフNo77 
放射線治療科 北原 利博

王子総合病院付属看護専門学校の学生は、2年次に4コマ(8時間)の授業で「放射線医学」を学びます。教科書は「画像診断」、「放射線治療」、「放射線防護」の3部構成で、およそ260ページ。写真や解説図を多用して、わかりやすく書かれています。講師は王子総合病院放射線治療科の医師が担当します。授業では「ぜひ覚えてほしい」部分を選んでお話しします。よく出来た教科書ですが、なかには文章だけの解説に終わっていて、わかりづらい部分があります。無理に覚えてもらう必要はないけれど、まさに放射線治療科で毎日行われている内容ですから、少しは理解してほしいと思って、解説を試みることがあります。その文章は次の通りです。
「高精度3次元放射線治療とは、CTシミュレータによる3次元治療計画を用いた高精度な3次元的照射手法によって、腫瘍に選択的に高線量を照射し、周囲の重要臓器への影響を最小限にする放射線治療方法の総称である。体動や臓器の動き、呼吸性移動への対応(固定、呼吸同期、照射中の位置確認)も重要である。実際の照射方法には次のようなものがある。

3次元原体照射(3D-CRT)

多数の異なる方向より(あるいは回転させながら)、それぞれの方向から見た病巣形状に照射野形状を一致させて照射する方法である。高精度3次元放射線治療の基本となる照射方法である。

強度変調放射線治療(IMRT)

照射野内の部分ごとに線量の強弱をつけた照射を多方向から繰り返すことによって、病巣の3次元形状への線量集中度を3D-CRTよりも格段に高める照射方法。これにより、頭頚部がんの治療における唾液腺機能の温存や前立腺がんにおける高線量照射が実現できる。ただし、照射手順がきわめて複雑なため、医学物理士などの専門家による品質保証・管理が不可欠である。

定位放射線照射(STI)

頭蓋内小病巣に多方向から集中させて1回大線量を照射することにより、病巣部のみを破壊する方法を定位手術的照射(SRS)と呼ぶ。照射野のズレを1~2ミリメートル以内に抑える高精度の照射装置が必要である。対象疾患は直径が3センチメートル以下の転移性脳腫瘍、脳動静脈奇形、聴神経腫などである。専用の装置にはガンマナイフやサイバーナイフがあるが、リニアックでもガントリーの回転と治療寝台の回転を組み合わせることにより可能である。この技術は肺や肝臓などの体幹部のがんに対しても応用されている。1回照射でなく、数回の分割照射が行われ、定位放射線治療(SRT)とよばれる。

画像誘導放射線治療(IGRT)

病巣形状に一致させて高線量を照射する高精度放射線治療においては、治療計画と実際の照射が正確に合致することがきわめて重要である。画像情報のたすけによって、照射直前あるいは照射中に中心位置や範囲を確認して精度の高い照射を行うものが、IGRTである。リニアックにおいては電子ポータル画像装置(EPID)やオンボードイメージャ(OBI)などの画像装置が装備されている。フラットパネルイメージ装置であるEPIDでは、治療用X線によるポータルイメージをデジタル画像としてリアルタイムにモニター上で確認できる。以前はリニアックグラフィを撮像して確認していた。また、診断用X線発生装置と画像検出器からなるOBIでは、透視やX線撮影に加えてコーンビームCTも撮像可能である。治療直前に取得した画像と治療計画時の画像とを合わせて定量的に比較し、位置のズレがあれば補正した後に照射する。」

 

引用 :医学書院「 系統看護学講座 臨床放射線医学 」

 

補足1

紹介した照射方法のうち、IMRTだけは当院では行っておりません。すでに必要な装置は揃っており、医学物理士も2名が常勤しているので、技術的には可能なのですが、常勤の放射線治療専門医が2名いないと診療報酬の請求ができません。人材難は如何ともしがたく、常勤の専門医1名のまま、足踏み状態です。

補足2

ズレには①xyz軸上のズレと、②xyz平面上の軸のズレの、計6要素があります。現行の寝台はもちろん①の補正が可能ですが、②に対応できないため、技師が直接患者の体位を何度も調整しなおしています。6要素を同時に補正できる寝台が開発され販売されており、できるだけ早く導入したいと思います。


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