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王子総合病院

わかりやすい医学教室

変形性膝関節症について

2019.10 ライフNo83 
整形外科 亀田 敏明

 

変形性膝関節症とは?

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿)という3つの骨から成り立っています。それぞれの骨は軟骨に覆われており、関節内に潤滑油として存在する関節液や、大腿骨と脛骨の間にあって体重を分散するクッションの役割をする半月板とともに、関節が滑らかに動くことを可能にしています。

軟骨と半月板は、長年使用しているとすり減って傷んできます。軟骨が傷むと徐々に骨の形も変形してO脚が進み、変形性膝関節症と呼ばれる状態になります。関節の滑らかな動きが障害されるため炎症を起こし、痛みが生じます。また、変形のために関節の動きが悪くなります。また、痛みが長引くと体が痛みを記憶してしまうため、炎症が収まっても痛みが続くようになります。そして痛みと関節の変形や動きの悪さにより、活動的な生活を送ることができなくなり生活の質が落ちてしまいます。

保存治療

手術をせずに症状を改善させる治療を保存治療と言います。保存治療の基本は、減量と運動です。膝関節は体重がかかりますので、肥満傾向の人には減量が特に重要です。運動は、痛みがひどくならない範囲での歩行や水中歩行といった全身運動や、膝周りの筋力トレーニングやストレッチが効果的です。それに加えて、炎症を抑える痛み止めや体が記憶してしまった痛みを抑えるための抗うつ薬を用いた薬物療法、湿布や塗布剤の外用、ヒアルロン酸の関節内注射、膝にかかる体重のバランスを変える靴の中敷きや膝を安定させるサポーターといった装具療法を行います。
コンドロイチン、グルコサミンなどのサプリメントは、体に吸収されるのはほんの少量で、関節内に届くのは1/1000程度と言われており、痛みも変形の進行も抑えられません。

手術治療

保存治療で十分な改善が得られない場合には手術を行います。手術治療には関節を温存する骨切り術と関節を人工物に取り換える人工膝関節置換術があります。以前は関節鏡も行われていましたが、効果がないことが分かったため半月板が引っかかるなどの特殊な場合を除いて行っていません。
骨切り術は、脛骨を関節の下で切って骨の角度を変え、金属の板で固定します。そうすることで、これまで膝の内側にかかっていた体重を膝の外側にかかるようにして内側の痛みを改善します。高齢の方は骨粗鬆症を合併している場合も多く、骨のつきが悪いことが考えられるため、手術の適応には慎重な判断が必要です。しかし、人工関節と違って負荷をかけても大丈夫なことから、膝の内側だけが悪くスポーツを行いたい比較的若い方にとっては非常に有用な手術となります。

 

人工膝関節置換術には、悪くなっている一部分だけを取り換える単顆置換術と、すべてを取り換える全置換術があります。単顆置換術は変形の矯正はあまりできませんが、膝の大部分は自分の関節が残るため違和感が少なく、特に満足度の高い手術です。ただ、全置換術よりは負荷に弱いため、膝関節の変形が少なく激しい運動をしない高齢の方が対象となります。

人工膝関節全置換術は、その名の通り膝関節の全体を人工関節に取り換える手術です。そのため、高度に変形した膝でも対応可能です。ただ、人工関節の構造上正座をできるまでに膝を曲げることは難しく、和式の生活は困難となります。しかし、旅行に行ったり、ゴルフや卓球といったスポーツをしたりすることは十分に可能ですので、生活の質の改善が期待できます。
手術療法は、どの手術にも一長一短があります。それぞれの手術の特徴を理解したうえで、患者さんにとってどの手術がいいかを判断して、もっともよい手術を選ぶことになります。

最後に

膝が悪くても生命にかかわることは少なく、不便ながらも生活していくことは可能です。しかし、 膝が悪いと自由に動くことができなくなり、質の高い生活を送ることは難しくなります。膝の悪い患者さんの生活の質を高めるお手伝いをさせていただきたいと考えています。

膝のことでお困りの方は、是非整形外科でご相談ください。


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