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王子総合病院

わかりやすい医学教室

めまいについて

2022.10 ライフNo95 
耳鼻咽喉科 久保田 圭一

 

秋は台風による低気圧での内耳障害、暑い夏からの気温変動による自律神経の問題など、めまいを起こしやすい季節の1つです。今回はめまいについてのお話しをしたいと思います。

めまいの原因は様々

めまいの原因は耳鼻咽喉科で取り扱う内耳性めまい以外に、心臓、血管など循環器疾患が原因となる場合、頸椎など首が原因となる場合、精神的な要因でめまいを起こす場合、そして脳血管障害、脳腫瘍などが原因となる中枢性めまいが存在します。
耳鼻咽喉科疾患でのめまいとしてはメニエール病、突発性難聴、前庭神経炎、中耳炎からの内耳障害、外リンパ瘻など様々ですが、今回は最も頻度の高い良性発作性頭位めまい症について説明します。

耳石が剥がれる良性発作性頭位めまい症

良性発作性頭位めまい症は、頭部を動かした際に数分間程度持続する回転性めまいが主な症状であり、耳鼻咽喉科領域のめまいでは30~50%を占め、10万人あたり30~70人程度の発病率であると言われています。英語ではbenign paroxysmal positional vertigoと書き、略称としてBPPVと呼ばれます(以下略称のBPPVで記載いたします)
BPPVは内耳の平衡斑に存在する耳石が何らかの理由で剥がれ、三半規管に迷入することで発症します。三半規管は左右に3本ずつ、合計6本存在していて、耳石がどの三半規管に入るかによって症状の出方が変わってきます。
耳石が剥がれる原因として、頭部の外傷後や耳の病気になった後に起こる場合もありますが、大部分は原因不明で、ある時突然に発症するため皆様驚かれることが多いのです。
また、40代以降、女性の方が多いため、更年期に伴うホルモンバランスの異常、カルシウム代謝の異常が関連する可能性も指摘されています。その他、骨折などで長期安静後の方や、毎晩同じ姿勢で寝ている方にも起こりやすいと言われており、同じ姿勢を長期間維持することが、内耳の耳石を支えている部分に負荷をかけている可能性も考えられます。
耳石は平衡斑での作成と代謝による消失を繰り返しています。そのためBPPVを発症しても通常は2~3週間程度で剥がれた耳石は消失し、めまいは起こらなくなります。しかし剥がれた耳石を元の位置に戻すことで、短期に症状を改善できる場合があります。そのためには、どの三半規管に耳石が迷入したのかを知る必要があります。耳鼻咽喉科では図1のような赤外線カメラを用いて、めまい発症時の眼の動きを確認します。めまいの時に見られる異常な眼球の動きを「眼球振とう」、略して「眼振」と呼びます。わざとめまいが起こるように頭を動かしながら眼球の動きを観察するので、患者さんにとっては辛い診察でありますが、眼球の動く方向から、どの三半規管に異常が起きているか判断できる場合があり、重要な診察となっています。

図1 赤外線カメラ

自宅でできる理学療法も

BPPVの治療方法として、異常のある三半規管が判明した場合に行う理学療法が幾つかあります。これらは多少複雑な動きになるので、医師の診察下に行うのがよいと思いますが、患者さんが自宅でできる理学療法も存在します。Brandt-Daroff法(ブラントダロフ法)という方法で図2のような動きを取ります。まずベッドなどで背筋を伸ばして正面を向いて座ります。素早く体を左右どちらかに倒して、視線は45度斜め上を向きます。30秒間もしくは回転性めまいが治まるまで体勢を維持してから、正面に座った体勢に戻り、今度は同様に反対側へ体を倒します。30秒間もしくはめまいが治まったらまた正面に戻ります。この動きを1コースとして何コースか行います。

図2 Brandt-Daroff法(ブラントダロフ法)

症状を伝えるポイント

めまいは病気によって症状が様々であり、上手に問診ができれば、それだけで診断が可能な場合もあります。症状を伝えるポイントとしては、1.めまいの性質:回転性かふわふわした浮動性なのか。2.随伴症状:めまいと同時に起きた症状が耳鳴、耳閉塞感、聴力異常であればメニエール病、突発性難聴などの内耳性めまいを疑いますし、手足の麻痺、ろれつが回らないといった症状があれば脳疾患を疑います。3.継続時間:一度起きためまいが治まるまでの時間です。例えば数日間続いた回転性めまいという表現でも、数日間ずっと途切れることなく回っていたのか、一度治まっためまいが何度も反復するのかでは、予想される病気が大きく変わってきます。4.誘因動作:めまいが起きる際に引き金となる動作があるかどうかです。前述の通り、寝返りなど頭を動かした際にめまいが起こればBPPVを疑いますし、立ち上がった際のめまいであれば立ち眩みなどの起立性調節障害、何もしなくても持続するめまいであればメニエール病、前庭神経炎などの病気を疑います。

まれに重要な病気も

めまいにはまれですが重要な病気が隠れている場合もあり、内耳性のめまいは生命の危険はないものの、強い症状が見られるため、特に初めてめまいを起こした方は不安を感じる方も多くいらっしゃいます。

めまいが心配な時には耳鼻咽喉科の受診を検討してみてください。


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