私たち臨床工学技士は、医師の指示のもとに『生命維持管理装置の操作及び保守点検・管理』を行っています。具体的には、人工透析をはじめとする各種血液浄化、ICUにおける各種血液浄化・補助循環業務・人工呼吸器管理業務、手術室業務(手術室ME機器点検管理業務・セッティング業務・手術支援(操作)業務)、ME機器中央管理業務、心臓カテーテル検査業務、ペースメーカー関連業務、VAIVT業務、高気圧酸素治療業務などがあります。
臨床工学科では、平常業務以外に緊急時(夜間・休日)の呼び出し対応をしています。
臨床工学技士 16名
(透析技術認定士:4名、体外循環技術認定士:3名、心血管インターベンション技師:1名、臨床ME専門認定士:1名 在籍)
当院の透析病床数は30床(個室1床含む)あり、月曜~土曜の完全2部制で透析を行っています。装置は日機装社製DCS-100NXを導入し、全てのベッドでオンラインHDFが施行可能です。慢性維持透析を中心に、オーダーがあれば血漿交換(PE)、血漿吸着(LDL吸着)、顆粒球吸着療法(GCAP)、腹水濾過濃縮再静注法(CART)、末梢血幹細胞採取(PBSCH)等の特殊血液浄化・アフェレシスも行います。
専用の空調設備を備えた透析液調剤室(クリーンルーム)にて、透析液の元となるRO水の製造から透析液の調剤、品質管理を臨床工学技士が責任をもって行っています。RO水からの無菌化を達成しており、万が一でも患者さんの体に菌が入る事が無いようシステムを構築。5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)を徹底し、常に無菌化された透析液を患者さんに提供できるよう努めています。
※当院は透析液水質確保加算を算定しています。
透析開始時の穿刺も業務の一つです。穿刺するだけではなく、患者さんの血管の状態を把握し定期的に評価するシャント管理を臨床工学技士中心に行い、必要時には血管エコー装置を活用し患者さんの血管トラブルを早期発見できるよう取り組んでいます。シャントが狭窄、閉塞してしまった患者さんに対する血管内治療(VAIVT)の介助も行っています。
血液浄化室にて透析施行困難な患者さんや、術後の透析患者さんに対するHD、HDFをICUで行っています。重症患者さんにはCHDFを中心としたCRRT(持続的腎代替療法)、血漿交換、エンドトキシン吸着等も行います。ICUでの血液浄化業務は365日、夜間、休日いつでも対応できるようオンコール体制を取っています。
手術室では多くの医療機器(麻酔器・内視鏡システム・電気メス・生体情報モニターなど)を使用して手術が行われています。臨床工学科では患者さまが安全に安心して手術が受けられるよう、これらの医療機器の点検・管理を行っています。
また、人工心肺装置や硝子体手術装置などの医療機器を操作して、手術室業務を支援しています。
臨床工学科 管理医療機器
麻酔器、内視鏡システム、電気メス、生体情報モニター、人工心肺装置、自己血回収装置、硝子体手術装置、ナビゲーション装置、レーザー、手術台、低体温管理装置、神経刺激装置、フットポンプ、i-Fusor Plus、ダヴィンチ(ロボット)
臨床工学技士が上記の医療機器に対して日常点検・定期点検を実施しています。
内視鏡下手術に使用する内視鏡システムや主に耳鼻科で使用する神経刺激装置に関しては、セッティング(準備)を行い、装置が正常動作することを確認しています。
心臓や大動脈疾患の手術は一時的に心臓を止めて行うため、臨床工学技士は人工心肺装置という心臓と肺の代わりをする装置を操作(体外循環)して、術中の患者さまの循環と呼吸を代替します。人工心肺業務は3名(体外循環技術認定士1名を含む)で担当し、安全な体外循環の提供に努めています。また、胸部ステントグラフト内挿術(TEVER)の際は、緊急時に迅速な対応が取れるよう経皮的心肺補助装置にて待機しています。
眼科の硝子体手術装置の点検・準備を行い、手術の際は1名の臨床工学技士が医師の指示のもと操作を行っています。
当院には2台のナビゲーション装置があり、耳鼻科・脳神経外科で使用しています。臨床工学技士が事前に点検、CT・MRI画像から3D画像を作成し、手術の際は1名の臨床工学技士が立ち会って準備を行っています。
心臓血管外科が行う下肢静脈瘤血管内焼灼術の際に使用するELVeSレーザーの点検・準備・操作を行っています。
当院では令和元年9月にDaVinci X(手術支援ロボット)を導入し、ロボット支援下手術を行っています。臨床工学科ではDaVinci Xの保守管理を行っており、トラブル時の対応もしています。手術の際は臨床工学技士がセッティング(配置・配線・起動)し、使用前・中・後に詳細な点検を実施します。また、医師の指示のもとロボットの介助操作を行い、安全に手術が出来るようにサポートしています。
医療法上「医療機関内で使用されるME機器は、医療従事者により適性に使用され、保守点検され、必要に応じて修理がなされ、保管される」となっていることから、院内にあるME機器をMEセンターで保管し、貸出や返却による定数・在庫管理および使用後・定期点検などME機器中央管理業務を行って、院内にあるME機器の安全維持・効率化を図っています。
などの点検・管理をしています。
心臓カテーテル検査とは心筋梗塞や狭心症、弁膜症など心疾患がある患者様に検査を実施し、必要であればそのまま治療も行います。臨床工学科では検査に必要な様々な生体情報を監視するポリグラフの操作や、血管の治療に必要なローターブレーターと呼ばれる機器などを操作します。
経皮的心肺補助装置(PCPS・ECMO)や大動脈内バルーンパンピング(IABP)など、心臓や肺を一時的に補助する機器で、心臓カテーテル検査業務、ICU業務、人工心肺手術業務など様々な場所で使用します。当院には経皮的心肺補助装置が1台、大動脈内バルーンパンピングが2台あります。必要になった患者様に速やかに使用できるよう、臨床工学科では日々機器点検をし、使用時には操作および管理を行います。
ペースメーカーとは、徐脈の患者様に正常の脈拍を担保する機器で、当院ではペースメーカー植え込み手術、本体電池交換、その後の外来管理まで行っており、臨床工学科ではその際に必要なプログラマ操作を行っています。一部のペースメーカー情報は、遠隔モニタリングシステムを利用しての管理を行っています。
高気圧酸素治療 :患者さまを装置内に入れ、その装置内の気圧を上げて(大気圧を0とし、1気圧まで)いきます。気圧を上げることにより血液に酸素を溶解させることができるため、体内で酸素が十分に行き届いていないところまで酸素を供給することができます。 このような効果が期待できるため、多科にわたる治療でもあり、臨床工学技士は、治療中の患者さまの経過観察と装置の操作・点検を行っています。