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王子総合病院

わかりやすい医学教室

狭心症と心筋梗塞

狭心症と心筋梗塞をあわせて虚血性心疾患といいます。いずれも、心筋に酸素や栄養を送っている冠状動脈に動脈硬化を主体とした病変がおこり、血流が不足し(虚血)発症するもので、壮年から老年期にかけ頻度の多い病気です。

 

2002.1 らいふNo12 
循環器科 高木 陽一

狭心症とは

典型的な狭心症では、階段をのぼったり、雪かきをしたり、運動をしたときなど心拍の増加や血圧上昇、いわゆる労作時に前胸部が圧迫されるような自覚症状が数分間出現し、休むとおさまります。そしてこれらの症状が先の冠状動脈の狭窄による場合を狭心症といいます。このような症状がある場合、病院で運動負荷検査などを行い疑わしければ短期入院の上、冠状動脈造影を行い狭窄の有無を診断します。強い狭窄が一箇所だけある場合、バルーン拡張術(狭窄部を内側から細長い風船で広げる)やステント(血管の内側を金属の筒で補強する)植え込みを行います。これらはいずれもカテーテルという管を使って体の外から遠隔操作で治療するもので、患者さんの体をあまり傷つけることなく行えます。狭窄病変が前述の方法で治療できない場合は、冠状動脈のバイパス術を行う場合があります。これは自分の静脈や動脈を利用して新たな血流路を作るものです。開胸術になりますが一度に複数の病変に確実な治療ができます。当院心臓血管外科では年間約50例の冠状動脈バイパス術を行っており、良好な成績をあげています。

心筋梗塞とは

心筋梗塞は、冠状動脈が完全に閉塞し、その支配領域の心筋が壊死してゆく過程で激しい痛み(典型的には前胸部痛)を発生する病気です。自覚症状上狭心症との違いは、発症が突然であること、痛みが強いこと、持続時間が数時間に及ぶことなどがあげられます。この場合はすぐに冠状動脈造影を行い、狭心症と同じような治療を行います。心筋梗塞の場合、発症からいかに早く来院できるかが重要となります。

狭心症と心筋梗塞とはどういう関係?

狭心症は冠状動脈の狭窄で、心筋梗塞はその閉塞ですと書きましたが、では、心筋梗塞の前兆としていつも狭心症がおこるのかというと、必ずしもそうではありません。冠状動脈の狭窄が徐々に進行して(徐々に症状が強くなってきて)ついにつまる、のではなく、軽い狭窄から一気に閉塞へ進行することがしばしばあります。ですから、狭心症症状の前触れなく、突然心筋梗塞の疼痛が起こることがよくあります。

心筋梗塞は痛いのか?

この稿でもふれましたし、一般の常識もそうだと思いますが、心筋梗塞といえばかならず激しい胸痛がおこると考えられがちです。確かに大半の方はそのとおりですが、そうでない方も結構います。
アメリカのフラミンガム研究では、急性心筋梗塞患者さんの25%は胸痛を自覚しなかったと報告しています。これらの人たちは、たまたまとった心電図で異常がみつかったり、かぜ症状や、失神をおこし、病院を受診して診断される場合が多いようです。さらに、これらの胸痛のない心筋梗塞の患者さんの割合は高齢になるほど増えるとされています。また、糖尿病を合併されている方にも多い病態です。

痛みや圧迫感はどこに感じる?

狭心症や心筋梗塞の症状は、すべて胸におきるかというと、これも必ずしもそうではありません。心臓は胸にありますから、胸痛や胸部圧迫感が部位として多いのですが、内臓の痛覚神経は、手足の神経と比べて大まかで、心臓の痛みを、肩や腕(左が多い)、のど、あご(あるいは下の歯)の痛みとして自覚することがあります。ですから、運動するといつもあごがだるくなり休むと治る、といった症状が狭心症によるものである可能性は十分にあります。

予防手段は?

虚血性心疾患は、基本的に動脈硬化を背景とした病気ですから、動脈硬化の危険因子を減らすことが予防あるいは再発防止につながります。喫煙、肥満、運動不足を改善し、血圧、コレステロール、血糖値、尿酸を定期的にチェックし、場合によっては治療を受けましょう。また血縁者に心疾患のある人、男性、高齢者はより注意が必要です。

おわりに

当院循環器科には7名の医師がおり、年間500例近くの冠状動脈造影を行っています。そのうち冠血管拡張術は約90例です。また急性心筋梗塞で緊急冠状動脈造影を行った方は年間約30人でした。虚血性心疾患も他の病気と同じく、予防、早期発見、早期治療が大切です。健康診断を受ける、また、おかしいと思ったら積極的に当科を受診してください。


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