呼吸器科として扱っている主な病気は、気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫、肺炎、肺癌、睡眠時無呼吸症候群、呼吸不全、サルコイドーシス、間質性肺炎、などです。病気の症状としては、咳嗽(せき)、喀痰(たん)、呼吸困難、のどの違和感、血痰、などがあります。同じ症状でも、肺に異常陰影がある場合と、ない場合があり、胸部異常陰影があれば、胸部CT検査、気管支鏡検査(気管に内視鏡を入れて中を診る検査)をしています。異常陰影がなければ、気管支喘息の場合があり、肺機能検査やアレルギー検査をしています。気管支喘息では飲み薬だけでなく、吸入薬や貼付剤もあります。今回は呼吸器疾患のなかでも気管支喘息についてご紹介させていただきます。
2002.4 らいふNo13
呼吸器科 小栗 満
医学的には気道の炎症と種々の程度の気流制限により特徴づけられ、発作性の咳嗽、喘鳴、および呼吸困難を示す病気です。簡単に言うと、さまざまな刺激により気道(気管、気管支)に炎症(火事にたとえることができます)がおこり、気道が狭くなり呼吸がしにくくなる(喘息発作)病気です。その結果、気道が敏感になります。(気道過敏性の亢進)
気道が狭くなることによる、呼吸困難が主な症状です。特に、息を吐きにくいというのが特徴で朝方に起こることが多いものです。気道過敏性の亢進もあり、外界からの刺激に対して(ゴミ、空気汚染、温度変化、湿度変化など)反応しやすくなり、咳、痰がでます。特殊な喘息として、気道過敏性の亢進が前面に出てきて、咳だけが唯一の症状である咳喘息と言われるものもあります。
喘息の危険因子は、その発症に関わる因子と、喘息を発症した患者さんの症状を悪化させる喘息増悪因子に分けることができます。発症に関わる因子として、素因(アトピー)、ダニ、カビ、花粉などの原因因子があります。喘息増悪因子としては、前述したものの他に、大気汚染、呼吸器感染(かぜ、肺炎)、運動、気象変化、食品、アルコール、薬剤などです。その他に、感情変化(喜び、悲しみ、怒り、不安)、ストレスでも悪化することがあります。
現在は主に、気管支拡張薬、抗アレルギー剤、交感神経刺激薬の吸入、吸入ステロイドで長期管理をしています。勿論、軽症なのか重症なのかによっても違います。吸入薬のスプレーを使う場合には、直接吸うのではなく、吸入補助器を使うことで、副作用の軽減、よりよい効果が得られます。
気管支喘息は放置すると呼吸困難がひどくなり、生命に関わってきます。実際、人口10万人あたり日本では約5人が喘息死しています。苦しくなれば病院へといっても、喘息を放置していると、徐々に苦しさに慣れてきて、意識障害ぎりぎりまで苦しいと感じなくなり、手遅れになることがあります。これを、防ぐためにも少し苦しい、動くと苦しい、咳が出るといった方は早めに受診されることをお勧めします。
呼吸器科では気管支喘息の他に、禁煙したい方、睡眠時の呼吸が止まっていると指摘されている方も受診していただければと思います。禁煙の方法としては、ニコチンガム、貼付剤などがありますが、成功率は50%です。金額は1日たばこ1箱よりも少し多くなります。睡眠時の呼吸が止まっているというのは睡眠時無呼吸症候群のことです。単にいびきがひどいというのではありません。入院し、一晩中機械を付けて寝て検査をします。
呼吸不全に対して在宅酸素療法も行っていますが、苦しいから酸素を吸いたいというのではなく、肺の機能や状態、心臓の機能も含め検査が必要です。息苦しさがあれば検査しますので、受診して下さい。
呼吸器科初診の方は胸部レントゲン写真の撮影を皆さんしています。妊娠中の方やどうしても撮影したくないという方は撮影していませんのでお申し出下さい。
治療薬は主に抗生物質や気管支拡張剤などの薬剤ですが、薬が多い場合や他の病気の方には漢方薬の処方もしています。
当科での入院治療に際し、治療法は主治医を中心とした呼吸器科医のみならず、外科、放射線科の医師との連携にて総合的に行っています。また、希望者にはセカンドオピニオンとして他病院への紹介も行っています。