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王子総合病院

わかりやすい医学教室

呼吸器疾患について

1) 喫煙について ニコチン依存

常習喫煙は、くせや嗜好ではなく、ニコチン依存によって引き起こされると考えられています。
喫煙行動の本質はニコチン依存です。喫煙により身体へは有害な健康影響があり、精神・身体にはニコチンによる依存が形成されます。 タバコによる障害は、世界保健機関の国際疾病分類10版ICD-10 (1992) に示されるように、コカインやアンフェタミンと同列の精神作用物質性障害に分類されています。日本を始めとする諸外国の調査では、常習喫煙者の5?8割に依存性が認められると言われています。
常習喫煙者では、長年のニコチン摂取のために、身体にニコチンが十分量存在しないと、正常な身体機能が保たれなくなっています。喫煙後、時間経過によりニコチンが体内から減少してくると、徐脈(脈が遅い)、集中困難、怒り、落ち着きのなさ、不安などの不快な離脱症状が現れます。
現在、禁煙の治療に用いられているものとしては、一般の薬局でも買うことのできるニコチンガムと病院で処方するニコチンパッチがあります。どちらも、身体のニコチン濃度を上げてタバコを吸わなくてもいいと感じるために、禁煙するという事です。これらの成功率は50%で、口元の寂しさ、物足りなさで喫煙している方には効果は有りません。当院でもニコチンパッチの処方はしていますのでご相談していただければと思います。

2)COPDについて COPDって何?

Chronic obstructive pulmonary disease、とは、慢性気管支炎、肺気腫、あるいは両者を併せ持つ、閉塞性換気障害のある疾患と定義されています。
最近COPDという言葉をよくお聞きになるかも知れません。呼吸器科外来にもパンフレットをおいてあります。
COPDとは、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれ、ここ10年ほどの間に患者数や死亡率が増加の傾向にあります。COPDは息切れ、咳や痰などの症状がゆっくりと進行します。しかし、症状が進むと日常生活に支障をきたすほどの呼吸困難や、肺がんにもかかりやすくなります。

厚生省(現在の厚生労働省)の患者調査によりますと、1996年の慢性気管支炎患者数は155.000人、肺気腫患者数は65.000人という結果が出ていますが、正確な患者数を求めるため、現在、推計学的な調査が進められています。
慢性気管支炎および肺気腫の99%は、喫煙が原因と考えられています。実際、COPDは60歳以上の男性に圧倒的に多く発症し、その年代の方が壮年期だった頃の日本人男性の喫煙率は、80%以上ともいわれています。喫煙をはじめて20?40年経過してCOPDが発症してくることを考えると、おそらく患者数は1千万?2千万人と推定されています。
COPDによる死亡者は約1万2千人です。また、65歳以上の慢性気管支炎および肺気腫による死亡数は約1万人、調整死亡率は人口10万対8.0となっています。
慢性的な咳や痰、あるいは階段を昇ると息切れがするなどの症状を持っていても、COPDと診断のついていない方がたくさんいるのではないでしょうか。単なる加齢による変化だけではない場合も多いので心当たりのある方は、一度呼吸器科を受診して下さい。

3) COPDの危険因子

3)-1 喫煙
COPDの発症に深くかかわり、そのリスクを増大させている最大の要因は喫煙です。喫煙は肺気腫の原因にもなっており、COPDの危険因子の80?90%を占めています。これまで喫煙者の多くは男性だったこともあり、肺気腫は男性にみられる病気でしたが、発症の要因が同じ条件であれば、女性のほうが発症しやすいといわれています。現在、女性の喫煙率が高くなっているので、十分に注意を払う必要があります。
3)-2 受動喫煙
タバコの副流煙は喫煙しない人にとっては大きな危険因子となります。
家庭での喫煙も空気清浄機では有害ガスを排除することはできず、強制排除するしかありませんのでご注意を。

4) COPDの治療

COPDは発症すると、元の状態には戻ることがほとんどない病気です。ですから、治療は病気の進行を防ぐこと、症状をやわらげること、そして生活の質を向上させることが基本になります。喫煙者は、最大のリスクである喫煙をやめることが重要です。具体的には症状が有れば薬物療法をします。それでも呼吸困難あれば酸素療法を行います。さらに、進行してしまう場合、人工呼吸器が必要になってきます。

最後に、息切れがすべての始まりです。喫煙者はすぐに禁煙しなければ、最終的に、極端な言い方ですが、人工呼吸器で機械の助けで生きていくことになります。ですから禁煙に心がけて下さい。当科でも禁煙に対するニコチン・パッチの処方をできます。呼吸リハビリもできます。興味のある方、したい方、受診して下さい。


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