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王子総合病院

わかりやすい医学教室

熱性けいれんについて

けいれん(「ひきつけ」という言い方もありますが、ここでは「けいれん」で統一します)は、いろいろな病気で起こります。その代表には「てんかん」があり、一生のうちで一度でもてんかんといわれる人はおおよそ100人に1人と言われています。それ以外にも子供の場合には発熱したときにけいれんを起こす「熱性けいれん」という小児特有の病気があります。この熱性けいれんは通常6ヵ月から5歳くらいまでの小児に起こります。神経系の病気を持たない健康な児に起こりうるもので、発達の途中にある脳の未熟性によるといわれていますが、まだ原因が全て明らかになったわけではありません。両親や兄弟といった家族に熱性けいれんがみられる場合もありますが、遺伝が証明されたものは一部だけです。熱性けいれんは全小児のおおよそ15人にひとりくらいに起きます。そのうち約半分の児では繰り返すことなく1回のみですが、残り半数は2回以上、そのさらに半分が3回以上繰り返します。

 

2004.1 らいふNo20 
小児科 小林 徳雄

熱性けいれんは「単純型」と「複雑型」に別れます。

単純型の発作は

  1. 年4回未満
  2. 全身に左右対称に起きる
  3. 1回15分まで
  4. 全て38度以上で起こっている

 

複雑型の発作は

  1. 年4回以上
  2. 左右非対称に起きる
  3. 1回15分以上のこともある
  4. 38度以下でも起こる事がある

 

殆どの例が単純型ですが、およそ1割は複雑型です。複雑型は単純型に比べて発作を何度も起こしやすい、低い熱でも発作を起こしやすい、5歳すぎても発作を起こす事がある、一部の児でてんかんに移行する、といった傾向があります。複雑型の場合は必ず一度は小児科を受診しましょう。脳波等の検査や薬による治療が必要かどうか相談して下さい。単純型でも繰り返している場合や心配な場合(1回の発作でも構いません)には小児科を受診する事をお勧めします。けいれんに対する疑問や不安をぶつけてみて下さい。
私達小児科医は常日頃けいれんの診療に関わっていますが、実際にけいれん発作が起きている場に立ち会う割合は少なく、発作の殆どが病院の外(自宅や保育所など)で起きています。したがって、けいれんが起こってしまった場合にはまず御両親が対処しなければならない事が多いのです。発作中でも呼吸できるようにする事が大切です。御自分の体に置き換えて考えてみると分かりやすいと思いますが、まずは衣服(特に首の周り)を緩める事、頭が屈みすぎたりしないように少し顎を伸ばす事、吐いたものを気管に飲み込まないように頭や体を横向きにする様にして下さい。舌を咬まないように割り箸やタオルを口に挟ませる事を勧める人もいますが、呼吸がしずらかったり、入れたものを噛み切って(あるいは歯が折れて)それが気管に入ると危険ですので、絶対にしないで下さい。大抵の発作は5分以内に自然におさまる事が多いのですが、稀ではありますが(特に3歳以下では)けいれんがずっと止まらない事もあります。けいれんが5分以上続いていて全く止まりそうもない時には緊急での病院受診が必要です。けいれんが止まっているようだけど意識が戻らない、けいれんが止まっているかどうかわからない、けいれんが何度も起きている、まひがあるといった場合も同様です。
子供はとかく熱を出しがちですが、高熱でも機嫌が良く食欲がある場合には、熱が出たからといって必ず下げなければいけないものではありません。解熱剤(げねつざい)は熱を下げる薬ですが、「元気になるため」、「御飯や水分を摂れるようになるため」に使うものです(熱が下がる事によってそういった効果を生みます)。ただし、熱があると熱性けいれんが起きる可能性がありますので、けいれんを起こした事がある児の場合にはたとえ元気でも「38度以上あったら」解熱剤を使って下さい。解熱剤は必ず常備しておきましょう。けいれんの予防に「けいれん止めの坐薬」を使う事もあります。けいれんを繰り返している場合には使う事も可能ですので、小児科で御相談下さい。
熱性けいれんをした事がある児に対しての予防接種ですが、けいれん自体は予防接種のさまたげにはなりません。発作から単純型で1ヵ月、複雑型で3ヵ月くらいあければ接種は可能です。発熱の機会を減らすことも大切です。積極的に予防接種をするようにした方が良いので、「けいれんしたからワクチンは出来ない」などと勝手に悩んだりしていないで、小児科医に早めに相談して頂きたいと思います。
熱性けいれんは小児の成長と大きく関わる病気です。かかりつけ医に、お子さんの成長発達も風邪等の病気と同じように相談しながら、子育てに必要な役立つ知識を身につけていって下さい。

2004.1 らいふNo20 小児科 小林 徳


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