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王子総合病院

わかりやすい医学教室

頭痛について

日本人の4人に1人は慢性的な頭痛持ちだと言われています。慢性的でなくても頭痛を経験したことが無い人はほとんどいないぐらい、頭痛は患者さまの訴えとして多い症状の1つです。今回はそんな頭痛についての理解を深めて頂きたいと思います。

 

2005.4 らいふNo25 
脳神経外科 稲村 茂

頭痛の診断

頭痛とは頭部、顔面、後頚部に感じられる痛みの総称を指します。そのため頭痛といっても、その場所や痛み方、強さなどは千差万別です。同じ原因で頭痛がしている患者さまがいたとしても、感覚のとらえ方に違いが生まれ頭痛の性状は個々で大きく違ってきます。もちろん客観的に頭痛の強さなどを測定できるような検査は存在しません。
しかしながら頭痛の原因はそれ程多くはなく、それぞれ特徴的な頭痛の性状があります。医師は患者さまからの頭痛の訴えを伺いながらどの特徴に当てはまるかを考え、CTやMRⅠといった脳の画像と併せて頭痛の診断をしているわけです。

頭痛の分類

頭痛の原因としては専門的には細かな分類(国際頭痛分類第2版2004)がなされていますが、一般的にわかりやすく分類すると表1のようになります。
症候性頭痛とは原因がはっきりしている頭痛です。頭痛を引き起こす原因の疾患があり、なかには命に関わる疾患も含まれます。患者さまはこのような疾患がないかどうか心配で来院されるわけですが、多くの場合が入院治療の対象となります。一方、機能性頭痛とは画像検査でも異常所見がなく、緊急を要する事はありません。頭痛そのものが疾患という頭痛であり、ほとんどの慢性的な頭痛はこれになります。
次に代表的な疾患の特徴と注意点を書きますので、自分の頭痛と照らし合わせてみてください。

 

症候性頭痛 機能性頭痛
1.くも膜下出血 1.片頭痛
2.脳腫瘍 2.群発頭痛
3.頭部外傷 3.緊張性頭痛
4.髄膜炎 4.その他
5.その他  

 

症候性頭痛

  1. くも膜下出血
    命に関わる頭痛の代表的な疾患です。突然に激しい頭痛が出現し直後に頭痛のピークが訪れるのが特徴です。「ハンマーで殴られたような頭痛」「人生最悪の頭痛」などと表現されます。嘔気や嘔吐を伴うことが多く、意識障害を認め救急車で搬送される事が多いです。頭痛だけの事もありますので注意が必要で、様子を見ている間に再出血により悪化する場合があります。CTや髄液検査で診断がつきますので早期に受診することをお勧めします。
    余談ですが、他の脳卒中(脳梗塞、脳出血)では頭痛だけが起きることは少ないです。脳細胞自身は痛みを感じないのと、神経の障害による麻痺や失語といった症状が出現するからです。
  2. 脳腫瘍
    腫瘍の増大に伴い頭蓋内圧(頭蓋骨の中の圧)亢進による頭痛が起こってきます。頭痛は徐々に増強し、また起床時の頭痛が特徴とも言われます。けいれん発作や神経症状、精神症状を併せ持つことが多いです。これも画像診断が有用で専門医の治療が必要となります。
  3. 頭部外傷
    けがによる痛みです。打撲そのものによるものや、いわゆるむち打ち症とよばれる頚部の軟部組織の損傷によって起こるのが主ですが、受傷直後では頭蓋内に出血があり頭痛を起こしている事があり、記憶障害や見当識障害を伴うことが多いです。通常はけがの治癒と共に頭痛は改善します。
    また受傷後約1ヶ月前後から頭痛が出現することがあります。これは慢性硬膜下血腫といって脳の表面にじわじわ血が貯まるために頭痛がします。貯まりが多ければ歩行障害や軽い麻痺が出現し、この場合緊急性は少ないですが専門的な手術治療が必要となってきます。
  4. 髄膜炎
    ウイルスや細菌による髄膜の感染症です。髄膜刺激症状といわれるものが原因で嘔気・嘔吐も出現し、感染症ですから発熱を伴います。画像上では明らかな異常は認めず髄液検査によって診断がつきます。自己の免疫力で治癒し軽症で終わることもありますが、悪化するとけいれん発作や意識障害を起こすことがあります。
  5. その他
    眼科疾患(緑内障など)や耳鼻科疾患(副鼻腔炎など)により頭痛が起こることがあります。それぞれの専門的治療が必要です。

機能性頭痛

  1. 片頭痛
    1~数ヶ月に1~2回、周期的にこめかみや眼を中心におこる拍動性(ずきんずきん、ガンガン)の強い頭痛が特徴で、時には嘔吐を伴います。若い女性に多く慢性頭痛全体の約1/4を占めます。大体は一晩寝ると楽になりますが中には2~3日具合の悪さが続く人もいます。また2割程度の人は前兆といって、頭痛がおこる直前に目の前がチカチカ光ったり、異常に大きく見えたりする見え方の異常を感じる場合もります。片頭痛の発作が無いときは全く症状がありません。
  2. 群発頭痛
    20~50才の男性によく見られ、慢性頭痛の1%程度と多くはないです。季節の変わり目に年1~2回、1~2ヶ月の間毎日きまって片方の眼の奥がえぐられるような、絞り切られるような頭痛が数時間起こるのが特徴です。片頭痛とは違いじっとしているのが困難なくらいです。頭痛と同時に眼が充血し涙が出たり鼻水がでたりという症状もあります。
  3. 緊張型頭痛
    年令は幅広く慢性頭痛の6~7割を占めるもっとも多い頭痛です。痛みの程度は強くないですが、後頚部が何となく重苦しく頭に輪をかけられた感じがしたり、めまいやすっきりしない感じがとれなかったりとか症状は様々です。多くの原因は肩こりですがその原因もまた様々です。仕事や育児が原因だったり運動不足が原因だったり、また精神的ストレスの現われとも考えられてもいます。なかには肩こりを自覚していないで頭痛だけを感じている人もいます。
  4. その他
    神経痛(三叉神経痛など)や心因性頭痛(うつ病など)などがあります。

日常生活で気をつけることは?

長時間立ったままや腰掛けたままでいないこと。この状態が避けられないときは、弾力ストッキングを着用し、つま先立ち、膝の屈伸などしたり、歩いたりしましょう。就寝時など足枕をおいて足を心臓より高くするのも効果がありますが、心臓の悪い人は主治医と相談しましょう。肥満に気をつけてください。リンパの流れも悪い方が多いので、足を清潔に保ちケガなどに気をつけてください。

おわりに

外来に来られる患者さまは中年以降の女性が多いです。しかしながら、静脈瘤は予防に勝る治療はないと考えます。若年者でも静脈瘤ができやすい人の条件を満たす場合は、弾力ストッキングを着用し、定期的な運動をするなど予防をすることで将来的な静脈瘤の発生を押さえることができるのではないかと思います。予防目的であれば、強い圧迫圧を必要とせず、最近では外観が通常のストッキングと変わらないファッション性を高めた製品も採用しました。特に妊婦さんは是非履いて欲しいものです。腹部を圧迫しないマタニティータイプという妊婦向けのデザインもあります。


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