図は、画びょう(矢印)を誤飲して喉の奥に刺さってしまった赤ちゃんのX線写真です。刺さった部分が化膿して腫れ上がり、その部分が気管を圧迫して呼吸困難となりました。幸い治療により回復しましたが、治療が遅れれば命に関わるところでした。
1~9歳の子どもの死亡原因の第1位は不慮の事故です。何にでも興味をもち、何でも自分でためしたいのが子どもの心の特性です。「なめてみたい」「まねをしたい」「いいにおいがする」「水や湯気にさわってみたい」といった好奇心が事故につながることがしばしばあります。子どもの事故を防ぐには「目を離さないで」よりもむしろ「目を離しても大丈夫」といえる環境を前もってつくってあげることが大事です。今回は年齢別にみられる重大な事故と、安全のための環境づくりについて述べたいと思います。
2006.4 らいふNo29
小児科 内藤 広行
乳幼期(1歳未満)
- ベビーベッドでの事故
- 柔らかい布団でうつぶせ寝をしていて窒息した→敷布団は固めのものを使用し、あお向けに寝かせる。
- ひもが首に絡まって窒息した→首にお守りなどをかけない。
- ベッドから転落した→ベッド柵はいつも上に上げておく。
- ベッド柵とマットレスの間に頭が挟まって窒息した→隙間ができてしまう場合には使用をやめるか、タオルなどを挟み隙間をなくして使用する。
- リビングでの事故
- ソファーなどを踏み台にして、窓から転落した→踏み台となるようなものを窓の下に置かない。
- タバコの吸殻、ボタン電池、錠剤などを食べた→直径39㎜より小さいもの(トイレットペーパーの芯を通る大きさ)は、赤ちゃんの口の中に入ります。誤飲の恐れがあるので、子供の手が届かないところに片付ける。自分の家だけでなく、外出したときも注意する。
- 浴室での事故
- 浴槽の残り湯でおぼれた→2歳の誕生日までは入浴後直ちに浴槽の水を抜く(赤ちゃんは10㎝ほどの浅い水深でもおぼれてしまいます)。
- 一緒に入浴した母親が洗髪中に、浴槽の中で転んでおぼれた→子どもが入浴中は目を離さないようにする。
- 階段での事故
- 洗面所・トイレでの事故
- 化粧品や、洗面台下に収納してあった強力洗剤をのんだ→子供の手の届かない所または鍵のかかる所にしまう。
- 洗濯機の中を覗いて転落しおぼれた→洗濯機の周りに踏み台となるものをおかない。
- 乗車中の事故
- 急ブレーキ時に座席から投げ出された→必ずチャイルドシートを正しく着用する。
- 子供だけを車の中に放置し、車内の温度が上がったための熱中症→短時間でも子供だけを車内に残さない。
幼児期(1~4歳未満)
- ベランダの事故
- ベランダの柵の間から下を覗いていて転落した→柵の隙間は85㎜以下が望ましい。窓をロックする。
- ベランダに置いてあった空き箱の上にのって下を覗き込み転落した→手すりの高さの安全基準は110㎝以上。柵のそばに踏み台になるものを置かない。
- 階段での事故(乳児期と同様)
- 道路での事故
- 先に車から降りた子供が車道に飛び出し、走ってきた車にひかれた→交通安全の基本を繰り返し子供に教える。
- 道路の反対側にいた友達に声をかけたら、いきなり飛び出した→子供と道路を歩くときは手をつないで大人が車道側を歩く。
幼児期(4~6歳未満)
- 道路での事故(1~4歳未満と同様)
- 自動車での事故
- 走行中、子供が車のドアを開けてしまった→必ずドアロックする。
- パワーウインドウに首をはさまれた→閉めるときは窓から顔や手がでていないか確認する。
おわりに
その他、乳幼児のやけどの予防対策として
- ポットやジャー・炊飯器、食卓上の熱いものは子供の手の届かない所に置く
- テーブルクロスは使用しない(子どもがつかまり立ちをするときなどに引っ張って、熱い食べ物や飲み物が置いてあるとこぼれてやけどをします)
- ストーブは直接熱源に触れないように柵などで囲う
などの注意も大事です。また、赤ちゃんの喉は未発達なので、気管に物が入りやすく、ピーナッツや枝豆などの豆類を与えるのは危険です。気管に入ると窒息や難治性の肺炎を起こします。4歳になるまでは手の届く所に置かないでください。
みなさんも子どもの命を守るために「転ばぬ先の杖」を心がけてください。