文字サイズ
背景色
  • お知らせ
  • フロアマップ
  • アクセス
  • お問い合わせ

王子総合病院

わかりやすい医学教室

慢性閉塞性肺疾患(COPD)について

2008.4 らいふNo37 
呼吸器科 蒲池 敦子

慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)は、さまざまな原因、特に喫煙により肺に慢性炎症が生じ、これにより、肺胞の破壊や気管支粘液腺の肥大が起き、その結果息切れを生じたり、咳嗽や喀痰が増加する病気です。英語のChronic Obstructive Pulmonary Diseaseの頭文字からCOPD(シーオーピーディー)と呼ばれています。以前肺気腫と呼ばれていた疾患と慢性気管支炎と呼ばれていた疾患は、両者が種々の割合で合併することが多く、この二つによる閉塞性肺疾患を合わせてCOPDと呼ぶようになりました。
COPDは、高齢者に多い病気ですが、喫煙との因果関係がこれほど明確な病気は他にありません。

健常人では細気管支の先にぶどうの房のような肺胞が無数あり、酸素と炭酸ガスの交換を行っております。肺気腫になると肺胞の隔壁が壊れてつながってしまい、壊れた肺胞が大きく膨らんで弾力性や収縮性のない小さな風船のようになります。肺気腫では肺胞の壁が喫煙の影響で破壊され、本来は目の細かいスポンジ状である肺の組織が目の粗いスカスカの状態になります(図1)。この変化は、病気が進むと胸部レントゲン写真で、肺が膨張して大きくなり、空気を多く含んで真っ黒くみえる変化として診断されますが、CTという肺の断層像を見る写真をとるとスカスカに壊れた肺の状態が目に見えて、肺気腫の進み具合がわかります。CTによる肺の破壊があらわれる段階よりも早期には、呼吸機能検査で、肺一杯に吸った空気を思い切り吐き出した際に、最初の1秒間に吸った空気の70%以上を吐き出せない(閉塞性障害)という変化が現れます。肺気腫が重症で息切れの強い人ほどこの1秒率は低くなります。
慢性気管支炎では、気管支に慢性の炎症や浮腫(むくみ)が生じ、気管支の分泌物が過剰になっています。そのため、痰を排出しようとして咳が出てきます。ウイルスや細菌に感染すると、膿性の痰が出て呼吸困難を生じます。
風船の空気の抜ける部分が狭くなって、空気がなかなか抜けないのが慢性気管支炎です。肺気腫も慢性気管支炎も慢性の咳や痰を伴います。
大部分の患者さんは両方の病気にかかっていて、息が速く吐けずに、また吐いた後で息を吸うことが困難です。そのために、普段は平気でも、階段を上がったり、信号で走ったりして、体を動かした時に、呼吸困難になるのが特徴です。

日本では厚生労働省の統計によると、二〇〇五年に一四四一六人(全死亡数の1.3%)がCOPDにより死亡し、死亡原因の十位、男性に限ると七位を占めていました。COPDの患者は男性の喫煙率が高いので、男性の方が多くて男女差があります。最近、男性の喫煙率が低下するのに対して若い女性の喫煙者が増えています。そのために将来的には女性のCOPDが増加することが予想されます。

COPDでは慢性の咳や痰、息切れによる生活の質の低下がみられます。
急性増悪(風邪、肺炎などによる)時に呼吸困難が強くなり入院治療を必要とする場合があり、重症例では人工呼吸器を使用した集中治療を要することがあります。また、肺炎にかかっても治りずらく、高齢者では肺炎を繰り返すうちに呼吸不全で死亡するケースも少なくありません。肺癌の合併も一般より多いことが知られています。肺癌で肺を切除する必要のある場合はもちろん、その他の全身麻酔を必要とする手術でも、肺が耐えきれず手術が出来ないことがあります。COPDは、非常に進行すると最終的には呼吸不全で死亡に至ります。

COPDは肺の組織に不可逆性の変化をきたすため、治療で元の健康な肺に戻すことは出来ません。ですから、出来るだけ早く禁煙を開始することが最大の予防となります。喫煙者では年齢に伴う呼吸機能の低下が急速に進みますが、禁煙を開始した時点からその低下は緩やかになり、生命の寿命の前に肺の寿命が来ることを防げます(図2)。
CPODで咳、痰、息切れなどの症状が出て来た場合には、症状を軽減するために気管支拡張剤(β2刺激薬、抗コリン薬、テオフィリン製剤)、去痰剤、などを使用し、気道閉塞の改善をします。抗コリン薬は吸入薬、テオフィリン製剤は内服薬、β2刺激薬は吸入薬、内服薬、貼付薬として用いられております。喘息様の症状(ゼーゼー、ヒューヒュー)を呈する患者さんや、呼吸機能が著しく悪い患者さんでは吸入ステロイドの使用が推奨されます。ウイルスや細菌などの感染症がある場合は迅速に抗菌剤で治療を行います。COPDは進行すると慢性の呼吸不全となります。在宅酸素療法を行っている人の多くはCOPDの方です。酸素ボンベなしでは生活が困難となります。さらに重症な場合には自力での呼吸が困難になり簡易型呼吸補助装置(バイパップ)を装着しなければならないこともあります。COPDによる症状を悪化させないためにも禁煙と肺感染の予防が重要です。

CPODで咳、痰、息切れなどの症状が出て来た場合には、症状を軽減するために気管支拡張剤(β2刺激薬、抗コリン薬、テオフィリン製剤)、去痰剤、などを使用し、気道閉塞の改善をします。抗コリン薬は吸入薬、テオフィリン製剤は内服薬、β2刺激薬は吸入薬、内服薬、貼付薬として用いられております。喘息様の症状(ゼーゼー、ヒューヒュー)を呈する患者さんや、呼吸機能が著しく悪い患者さんでは吸入ステロイドの使用が推奨されます。ウイルスや細菌などの感染症がある場合は迅速に抗菌剤で治療を行います。COPDは進行すると慢性の呼吸不全となります。在宅酸素療法を行っている人の多くはCOPDの方です。酸素ボンベなしでは生活が困難となります。さらに重症な場合には自力での呼吸が困難になり簡易型呼吸補助装置(バイパップ)を装着しなければならないこともあります。COPDによる症状を悪化させないためにも禁煙と肺感染の予防が重要です。

COPDを予防するためには、禁煙が一番です。現在、喫煙している人でも、できるだけ早く禁煙すれば、COPDになる可能性を減らす事ができます。しかし、タバコは麻薬と同様で脳に強い依存性を起こすため、悪いと知っていても禁煙出来ない方が多く居るのも事実です。当科外来では、1日に吸うタバコの本数が多く、禁煙が困難な人には、ニコチンパッチというシールを皮膚に貼ることで、比較的楽に禁煙を開始して頂く禁煙指導も行っています。また、近年、1日1回の吸入で効果が続くタイプの薬が認可され、息切れの改善に高い有効性を示しています。COPDの安定期には、薬物療法のみならず、肺の理学療法(口すぼめ呼吸、腹式呼吸などの呼吸訓練)や運動療法(歩行による下肢の筋力維持など)といった呼吸リハビリテーションも大切ですのでそちらの指導も行っています。早期診断ならびに適切な指導をうけることでCOPDは予防可能です。COPDが心配な方は是非一度外来にかかり相談して下さい。


わかりやすい医学教室