文字サイズ
背景色
  • お知らせ
  • フロアマップ
  • アクセス
  • お問い合わせ

王子総合病院

わかりやすい医学教室

PET-CTについて

PETとは、Positron Emission Tomography(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)の略語です。日本語では、「陽電子放射断層撮影」と訳します。具体的には、陽電子(ポジトロン)を放出する放射性物質(ポジトロン核種)で標識した薬剤を静脈から注射して、細胞の活動状態を画像化する技術です。

 

2011.10 らいふNo51 
放射線技術科 川原 章夫

2. ポジトロンとは

ポジトロンとは、正の電荷をもった電子(陽電子)のことです。この陽電子は、安定な物ではありません。物質内では、近くの電子と対消滅してガンマ線(エネルギー : 511kev)に変化します。この特徴を使ってPET検査を行います。つまり、PET装置は、ポジトロンを直接に計測しているのではなく、このガンマ線を計測しているのです。

3. ポジトロン核種とは

陽電子を出す(放出する)放射性同位元素のことです。これは、サイクロトロンという特殊な装置によって作られます。PET検査に使用される代表的なものは、18F(フッ素)・11C(炭素)・13N(窒素)・15O(酸素)です。これらの半減期は、非常に短いために薬剤として使用できる時間も短いのです。

4. 半減期とは

放射線を出す能力が半分になる時間のことです。これを物理的半減期と言います。放射性同位元素は、固有の半減期を持っています。つまり、放射能を出す能力は1回目の半減期で半分になり、2回目の半減期で1/4になり、3回目の半減期で1/8・・・と永遠に続きます。ちなみに、18F(フッ素)の半減期は、約2時間です。これとは別に注射や経口投与した放射性検査薬品が体内から尿や便として排泄されて半分になる時間を生物的半減期といいます。

5. 放射性検査薬品とは

核医学検査で使用されるもので、微量な放射線を出すものです。検査目的に応じて、多くの種類があります。この薬を注射または、経口投与して検査を行います。PET検査で使用する放射性検査薬品は、ポジトロン核種を検査目的の薬品に標識して作ります。代表的なものには、18F-FDGというブドウ糖によく似た薬品があります。

6. PET-CT検査とは

身体の機能(代謝状態)を調べるPET検査と、その形を調べるCT検査を組み合わせたものです。検査機器は、CT装置とPET装置をくっつけて一体化したものです。概観は、CT装置と同じですが、少し奥行き(筒の長さ)が長くなります。PET検査は、核医学検査の一分野で、診断したい臓器および代謝状態に特異的に集まるように加工した薬を体に投与して行います。
この薬は、放射性検査薬品といい、微量な放射線を出す性質があります。診断目的の臓器および代謝状態の過程にこの薬が集まると、そこから放射線が出てきます。この放射線を特別なカメラで受け止めて画像化する検査です。
しかし、PET検査の画像だけでは、体のどこにこの薬がたくさん集まっているかを正しく診断することが困難です。そこで、体内の形を明瞭に画像化出来るCT検査を同時に行います。これらの2つの画像を平面や立体的に重ね合わせることで、診断能を向上させることが出来ます。これがPET-CT検査です。

7. 18F-FDGについて

18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)は、放射性検査薬品の1つです。この薬品は、ブドウ糖類似化合物にポジトロン核種(18F)を化学合成したものです。主にがんの検査に使われます。なぜなら、ほとんどのがん細胞は分裂増殖のため大量のエネルギーを必要としており、正常細胞の数倍から約20倍のブドウ糖を取り込むことが分かっているからです。

8. PET検査の有効性

  1. 短時間で全身のがん検索が出来ます
    部位別のがん検査と異なり、1回でほぼ全身を調べることが出来ます。
  2. 苦痛はほぼありません
    数ccの検査薬を注射するときの痛みだけです。その後、約30分間の撮影があります。
    撮影用寝台に横になっているだけです。場合により2回目の撮影があることもあります。
  3. 良性・悪性の判断
    細胞の活動状態をみるPET検査を加えることにより良性・悪性の鑑別をより正確に行うことが出来ます。
  4. がんの進行の程度・転移・再発の有無
    がんは、離れた臓器に転移をしたり、治療しても再発してくる場合があります。また、がんの転移や再発がどこに出現するかを予測することは大変困難です。一度の検査で全身を診ることが出来るPET検査は、がんがどの程度まで拡がっているかといった、がんのステージング判断(病期診断)をしたり、思わぬ場所への転移や再発等がないかを調べるのに役立ちます。これらを確認することは、治療方法を決めるのにとても重要です。PET検査による病状の把握で治療方針が変わることも少なくありません。
  5. 治療中の効果判定
    がんの治療には手術以外にも、化学療法(抗がん剤等)や放射線療法など、さまざまな方法があります。従来はCT検査やMRI検査で、治療の効果判定を行っていましたが、治療後も異常陰影が残っていることがありました。この場合、この異常陰影が、がん細胞が残っているものなのか、それとも治った後の瘢痕なのかを判断するのが困難でした。PET検査を用いるとがん細胞の活動性がわかるため、従来の検査より早い時期に治療の効果判定を行うことが可能となります。治療の効果判定をより早く行うことで、次の段階の治療方針を速やかに検討することが出来ます。
  6. 認知症の早期発見
    PET検査は、がんの検査と思われていますが、もとは脳の働きを調べる研究から始まった検査です。脳のエネルギー代謝や神経細胞の活動状態を調べるのを得意とします。特にアルツハイマー型認知症では記憶を司る場所の活動が低下するためPET検査で比較的早期に発見することが出来ます。 但し、欧米で行われていますが、日本の保険医療では、認められていません。よって、PET-CT検診で行うことになります。

 

PET検査は、放射性検査薬品を換えることで、いろいろなことを画像化出来る検査です。放射性検査薬品は、日進月歩で研究がなされております。近い将来には、新たながん検査薬品や脳機能薬品等が発売されるでしょう。  この最新機器で皆様に最良の医療をお届けするように努力いたします。PET-CT検査についてお聞きになりたいことがありましたら、放射線技術科核医学診断室へ お気軽にお声をおかけ下さい。

 


わかりやすい医学教室