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王子総合病院

わかりやすい医学教室

腹腔鏡下手術について

2021.01 らいふNo88 
外科 鯉沼 潤吉

お腹の手術と聞いて何を思い浮かべますか? 癌の手術や虫垂炎(盲腸と呼ばれることが多いです)、帝王切開などでしょうか。私たち外科はお腹の中で主に消化器を担当しており、例えば虫垂炎の手術は外科の担当です。漫画「ブラックジャック」はほぼ消化器の手術を手がけていますので外科医となります。外科はご存じのように手術をする科ですが、今回お話しする腹腔鏡下手術は、お腹の手術に対する手法の一つで、現在主流になりつつある手術です。

開腹手術と腹腔鏡下手術

胃や大腸といった消化器に対する手術を行う際に、従来から行われている手法は開腹手術です。お腹の真ん中を縦に切開することが多いです。傷は大きくなりますが、全ての手術の基本になります。それに対し、腹腔鏡と呼ばれる細長いカメラを用いた手術が1990年頃から行われるようになり、腹腔鏡下手術(もしくは腹腔鏡手術)といいます。当院で2019年に施行された腹部手術約500例のうち、半数以上が腹腔鏡下手術でした(図1)。腹腔鏡下手術ではお腹の切開は臓器を取り出す程度の最小限の大きさに抑え、代わりに何カ所か小さな孔を開けて手術を行います。腹腔鏡下手術は傷が小さい、痛みが少ないといった患者側のメリットに加え、臓器の細部まで近接して観察できるという医療者側のメリットがあります。一方で、開腹手術に比べて技術的にやや難しいというデメリットがありますが、現在ではほとんどの外科医が開腹手術と並行して腹腔鏡下手術のトレーニングを受けています。


図1

腹腔鏡下手術が行われる病気

  • 胃や大腸、直腸など消化管にできた癌。
  • 胆嚢炎、虫垂炎、ヘルニアなど良性疾患。
  • 肝臓、膵臓、脾臓などの実質臓器の腫瘍(今のところ限定的です)。

腹腔鏡下手術の実際

写真は腹腔鏡下手術で使われる腹腔鏡、鉗子(ものを掴む器具)、ポート(鉗子を出し入れするための筒)です。

お臍などに小さな孔(概ね3~5個)を開けてポートを取り付け、腹腔鏡や鉗子を出し入れして手術を行います。手術の傷は開腹手術に比べて小さく、回復も早いと言われています(図2)。


図2

ロボット支援下手術

腹腔鏡下手術の延長線上にロボット支援下手術があります。腹腔鏡で使われていた鉗子の代わりに、ロボットと連動した精密な鉗子が使われます。ロボット支援下手術ではお腹の中で鉗子の先端を自由自在に動かすことができ、腹腔鏡下手術と比べてより複雑な操作を正確にできる様になると期待されています。当院でも専用のロボット「ダ・ヴィンチ」が導入されており、消化器では直腸に対する手術が始まりました。ロボット支援下手術は精密な作業が得意な反面、腹腔鏡下手術や開腹手術に比べて動ける範囲に制限があり、まだ限られた手術にしか適応になっていません。


図3

最後に

開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術は、どの手法が優れているかというものではなく、それぞれに得手不得手があります。安全性を第一にお腹の中の状況や臓器に応じて最適な方法を提案します。


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