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王子総合病院

わかりやすい医学教室

下肢静脈瘤について

2021.07 らいふNo90 
心臓血管外科 砂土居 泰生

はじめに

仕事の後など、脚が異常に重だるくて困ったりしたことはありませんか?頻繁に脚がつって困ってはいませんか?脚がむくんでいたりはしませんか?自分の脚をよく見てみましょう。脚の血管がボコボコと浮き出ている方、それは「静脈瘤」の症状かもしれません。「静脈瘤」について勉強してみましょう。

静脈瘤とは

「立っている時に血管径3ミリメートル以上に拡張した下肢の皮下静脈」を(下肢)静脈瘤と呼びます。そもそもの原因に応じて「一次性」と「二次性」のものに分けられます。全身で使われた血液は静脈を通って心臓に返っていきますが、静脈には所々に逆流を防止する「弁」と呼ばれるものが存在します。その弁が壊れて、血液が逆流した結果、脚の静脈が拡張したものを「一次性の下肢静脈瘤」と言います。「二次性の下肢静脈瘤」は血栓や腫瘍・妊娠などにより静脈血がせき止められて、血液がうっ滞することにより生じたものを言い、これらは原因が除去されれば改善することが見込まれます。ここでは血管の治療の対象となる「一次性の下肢静脈瘤」について説明していきたいと思います。


正常な静脈の流れと静脈瘤

どんな人に多いのか

遺伝的要素もあると言われていますが、高齢の方・女性・肥満などがリスクと考えられています。妊娠や出産を契機にできることもあります。また、長い間立ち仕事に従事している方もなりやすいです。45歳以上の方では女性で24.4%、男性で12.4%に静脈瘤があると報告されており、比較的身近な疾患と考えていいでしょう。

どんな症状が出るのか

見た目の変化として、はじめはモヤモヤした網目のような血管が見えてくることがあります。血管がボコボコと出てきても症状のない方もいます。そのうち、脚の重だるさ、痛み、むくみ、こむら返りなどの症状が出てくる方がいますが、その程度は人によって様々です。重度なものになってくると、皮膚の色が茶色く変色してきたり、傷の治りが悪くなり深く広がって潰瘍となったりします。


素沈着と潰瘍      瘤になった大伏在静脈

検査・診断

静脈瘤としては、視診や触診でほとんど診断がつきます。「一次性の下肢静脈瘤」の場合は、どこで弁の逆流が起こっているか確認するために、超音波検査を行います。

治療法(保存療法と手術)

「一次性の下肢静脈瘤」は有効な薬がある疾患ではありません。基本的な治療法は圧迫療法か手術の2つです。圧迫療法には様々な圧迫方法がありますが、当院では主に治療用「弾性ストッキング」を使用しております。締め付ける圧力が、市販のものよりもかなりきつめのストッキングになります。これを履くことにより症状の改善が見込まれますが、あくまでも症状への対処であり、効果は履いている間の一時的なものになります。根本的に解決するにはもう一つの治療方法である手術しかありません。

当院での治療について

当院では、毎週金曜日の午後に静脈瘤の外来を行っています。そこで診察・診断をつけて治療方針を決定します。手術となれば一泊二日の入院で、入院当日に手術を行い、翌日に退院としています。手術の内容はカテーテルを用いたレーザー治療か、2?4センチメートルの切開で原因となる静脈を縛る手術がほとんどです。これは超音波の検査で術式が決まります。ここ数年では年間50?60件ほど静脈瘤の手術を行っています。

最後に

いかがでしたでしょうか。静脈瘤は直接生命に関わるような疾患ではありませんが、症状が重たい場合は生活の質を著しく低下させます。また、皮膚病変のある方は潰瘍ができてしまうと長期間の治療を要する可能性もあります。「静脈瘤かな?」と思ったら、遠慮なく相談しにいらしていただければ幸いです。


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